軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42「ビッグネームの反応じゃね?」

――アースガルズ

雷神トールは昂っていた。

「父よ! 偉大な父オーディンよ! 私は今昂っている! この興奮と猛りを抱き、日本に行ってこようと思います!」

二メートルを超える巨漢の青年は、端正な顔に興奮と好奇心を携えて玉座に座る父オーディンに告げた。

「……駄目に決まっている」

スマホをぽちぽちしていたオーディンは、片目をトールに向けると、髭を一撫でして呆れた声を出す。

「なぜですか!?」

「我が息子、トールよ。最近、無駄に名前が売れているトールよ!」

「……後半の言葉は必要でしたか?」

「必要である。ごほん。お前が、日本へ、否、地上に行くことはならぬ」

「なぜですか、父よ!」

納得ができないトールの肉体から、紫電が走った。

「お前のことはよくわかっている。素盞嗚尊を下した少年、由良夏樹と戦いたいのであろう?」

「もちろんです! 彼の雷は素晴らしい。ぜひ手合わせをしたい!」

「ならぬ」

「父よ!」

「お前は、今のような無駄に有名な神が日本に行けばどのようなことになるのかわかっているのか!」

「わかりません! 人間が神に気づくことはないでしょう!」

「だとしてもだ! もし、お前が雷神トールだとわかれば、人々はがっかりする! あ、なんか映画と違うなーと!」

「それこそ私の知ったことではありません!」

「私だって、日本の秋葉原で豪遊したいのだが、日本人をがっかりさせないように我慢しているのだ! だというのに、なぜお前が、抜け駆けできるのか!」

「……まあ、確かに父上は、かの俳優殿にはまるで似ていない、見てくれはただのおっさんですが」

「かあっ! 余計なことを言うでない! というわけで、お前は日本へ行ってはならぬ!」

オーディンもトールも、ここ何年かの間で、映画になったり、ゲームに登場したりと忙しい。

とくに日本では、北欧の神々だけではなく、世界中の神や魔、有名な存在からマイナーな存在まで娯楽の対象となっている。

それをよしとしない神や魔もいるのも確かだ。

「……私は知っています。父がゲームで強キャラであることを他の神々に自慢していることを!」

「……それは仕方がないことだ。斉天大聖など、いつだってドヤ顔なのだぞ!」

「私だって強キャラです!」

「私ほどではないがな!」

「……いいでしょう。ならば、どちらが本来の強キャラかこの場で決めてもよろしいのですが!」

「いいだろう。それでは、スマホとカードデッキを出せ! 私に勝てたら日本行きを許そう!」

「……いいでしょう。暇を持て余した神がどれほど強くなったか、ご自分でお確かめになるといい!」

この日、オーディンとトールは激突した。

まずはスマホを介しての対戦を。続いて、カードゲーム。さらに最新ゲームで死闘を繰り広げた。

戦いは三日三晩と続き、そして決着が着いた。

「――強くなったな。いいだろう。日本へ行くといい」

「ありがとうございます、父上!」

「気に入ったら由良夏樹を連れてくるといい! 我が子や我が孫をくれてやろう!」

こうして、北欧神話から雷神トールが日本に向かうのだった。