軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38「マザコンじゃね?」①

「げほっ、ごほっ、すぅ……はぁ……はぁ、あれ? もしかして、息止まってた?」

呼吸を取り戻した夏樹に、千手、蓮、祐介が驚きと喜びを溢れさせた顔をしていた。

「息止まってたじゃなくて、死んでたんよ! おまっ、ふざけんなよ!」

「ご、ごめん、千手さん」

「……正直、ダメかと思ったよ」

「ごめんね、蓮」

「助かってよかったぁ」

「……おそらく戦うのだと思うのだが、問題ないのか?」

「ああ、絶好調さ!」

千手、蓮、祐介、征四郎と言葉を交わし、夏樹は四人に感謝をした。

「ありがとう、祐介くん。みんな、ありがとう。んじゃ、とりあえず片付けてくるよ」

夏樹が軽く地面を蹴ると、小梅と銀子の攻撃を軽々と避けていた素盞嗚尊の前に割って入り、股間を蹴り上げた。

「――かひゅっ」

今出せる、魔力を注ぎ込んだ自慢の蹴りだった。

ぐにゃっ、と足に気持ちの悪い感触があったが、気にしないことにする。

「夏樹ぃ! おどれ、生きとったんか!?」

「夏樹くん!? 死んだはずじゃ!?」

「ごめんね、小梅ちゃん、銀子さん。なんとか、なったよ。ここからは俺に任せてほしい」

死んだと思っていた夏樹が目の前にいることに、小梅と銀子は瞳に涙を浮かべて、言葉もなく喜んだ。

ふたりを夏樹は短く抱きしめる。

「さあ、離れて。ちょっと本気出すから」

「……勝つって信じとるぞ」

「もちろんさ!」

「……負けたら魔剣もう一本もらうっすからね!」

「負けたら十本でもあげるって!」

ふたりに下がってもらい、夏樹は素盞嗚尊を向く。

股間を押さえて内股になり、脂汗を浮かべてプルプルと足を震わせている神は、夏樹を血走った目で睨んだ。

「……お、おま、二度は、ないだろ。今、潰れたぞ。マジで、潰れたからな、一瞬、女の子になったぞ。須佐子になっちゃったぞ」

「こっちは、死にかけたんだ。おあいこだ」

「ふざけ、んな、釣り合いが取れてねえ、よ」

荒い呼吸を繰り返しながら、背を丸めた素盞嗚尊が失った腕を振るう。

すると、自らが切り落としたはずの腕が、再生していた。

「はいはい、手品すごいねー」

「……お前、神様舐めすぎだろ」

「あんたは俺の前に現れてから神らしいことなんてなにひとつもしてないんだよねぇ!」

腰をトントン叩いていた素盞嗚尊が、大きく息を吐き出し、天叢雲剣を構えた。

「お前のことは気に入ったし、それなりの評価をしていたんだが、まず上下関係を解らせる必要があるようだな」

「自分から学びたいなんていい心掛けだ。あんたが俺の下だってことをよーく知っておくといいぜ」

素盞嗚尊が神力を、夏樹が魔力を爆発的に高めた。

刹那、素盞嗚尊の身体が弾き飛ばされ川に落ちる。

「ふむふむ。全盛期の六割ってところか。聖剣さんが協力的だから、いい感じだ!」

五割で戦っていたときよりも、身体が軽く、動きがよくなった。

全盛期には届かないが、それでも一段階強くなったことが自分でもはっきりとわかった。

「……ありえねえだろう、人間の器でそれだけの力を出すとか……なんで死んでねえんだよ?」

川から上がってきた素盞嗚尊が驚愕を貼り付けている。

夏樹は不敵に笑うと、手招きをした。

「こいよ、異世界帰りの勇者様の力を見せてやるよ」

「――抜かせ。てめぇだけが力を隠していたと思うなよ?」

素盞嗚尊の神力がさらに高まっていく。

やはり神だけあり、今までの力はだいぶ抑えていたのだろう。

だが、力を出しきっていなかったのは夏樹も同じだ。

身体中の細胞に魔力が行き渡るように広げていく。

「いいぜ、いいぜ、由良夏樹。俺は強い奴が大好きだ」

「俺はあんたみたいな奴は大っ嫌いだ」

「つれねえこと言うなよ。俺たちは似ている」

「やめて」

「俺たちは強くなる理由がある。そうだろう?」

「あるんだろうね、きっと」

「ふっ、隠すなよ。俺はママのために強くなった」

「――はい?」

「ママのために強くなり、ママのために戦い、ママのために生きてきた」

「うわぁ」

「お前もそうだろう、夏樹?」

「いえ、違います。お母さんは大事だけど、そこまでじゃないかなぁ」

「照れるなよ。……おっと、年頃の男の子だもんな。なかなか認められないものさ」

「勝手なこと言うなよ! というか、どうして急にママの話になるんだよ!」

戦意を溢れさせていた夏樹から、力が抜けそうになっていた。

なぜこの瞬間に、ママがどうこう、という話を聞かなければならないか理解できない。

「すまねえな、俺は本気を出す時は、ママへ戦いを捧げる時だと決めている。今回の戦いで、俺は数百年ぶりに本気を出そう思ってな」

「……あ、はい」

「怯えることはねえ。死んでもママが生き返らせてくれるさ。ママは偉大な女神なんだ! いや、すまん。お前のママだって偉大だよな! そうさ、ママはいつだって、ママってだけで偉大なんだ! 俺たち男の子は、みんなママのために戦い、ママのために強くなり、ママのために生きる。そうだろ? ママぁああああああああああああああああああああああああああ!?」

「うわぁ」