作品タイトル不明
36「息してないんじゃね?」
「夏樹ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
背中から倒れた夏樹に、翼を広げて小梅が飛んだ。
「夏樹くん! 小梅さん! ええい、男ども! 夏樹くんを助けるっすよ!」
銀子も小梅を追って走る。
蓮、祐介、千手も、それぞれ頬を叩き、膝を殴りつけ、喝を入れて走った。
誰もが素盞嗚尊にビビって動かなかったのではない。
強すぎる神気に恐怖し、硬直していただけだ。
だが、夏樹の危機に恐怖が消え、三人は銀子に続く。
「……素盞嗚尊……おどれぇ……東方の島国程度の神が、よくもやってくれおったなぁああああああああああああああああああああああ!」
夏樹が息をしていないことを確認してしまった小梅は、涙を流し、素盞嗚尊に向かった。
純白だった翼は、黒い炎を宿し、燃え盛る翼となる。
「おいおい、サタンの娘が闇落ちとか面白すぎだろ! あー、違うか、それが本来のお前の力か」
「死にさらせぇええええええええええええええええええええ!」
彼岸花を焼き払いながら、真っ直ぐに素盞嗚尊に飛んだ小梅が拳を繰り出す。
素盞嗚尊が小梅の拳を左手で受け止めるが、次の瞬間、焼け爛れていく。
炎は手のひらから、徐々に上に上がっていく。
「おいおい、これは洒落にならねえな」
炎に焼かれていく左腕を、素盞嗚尊はなんの躊躇いもなく肘から下を天叢雲剣で切り落とした。
その思い切りの良さと、度胸は、さすが多くの逸話を持つ神であった。
「誇っていいぜ、俺から腕一本奪ったんだからな!」
「舐めるなぁああああああああああああああああ!」
小梅が光の槍を虚空から抜くと、真っ直ぐに素盞嗚尊に突き出す。
彼女の一撃は、素盞嗚尊ほどではないが神気がこれでもかと込められていた。
素盞嗚尊もさすがに素手では受け止められず、天叢雲剣で受け止めた。
天叢雲剣と光の槍がぶつかり、眩い光と衝撃波が生まれる。
「たまんねえな、おい!」
戦いに湧く素盞嗚尊が心底楽しそうな顔をするが、その背後で銀子が魔剣を抜いていた。
「――しっ」
音もなく抜刀し、斬撃を繰り出すと、素盞嗚尊の腹が斬られる。
臓物が溢れるほど深く斬ることができなかったことに、銀子が舌打ちをする。
だが、続けて魔剣を振るい手数で攻めることに切り替えた。
「いいな! それ、異世界の魔剣だろ!? 俺もほしいな、おい! 夏樹に頼んでくれねえかな!」
「夏樹くんを殺しておいて、よくもそんなことを!」
「ははははっ! 死んじまったか、そりゃ残念だ! まあ、天叢雲剣で斬られたら、人間なら死んじまうよなぁ!」
「おどれも死にさらせぇ!」
「死んじまえっす!」
小梅と銀子のコンビネーション攻撃によって、身体中に火傷と斬り傷を増やしていくが、楽しそうに笑い続けるのだ。