作品タイトル不明
11「リリスさんの提案じゃね?」①
「それにしても、心に傷を負った人ってどうすればいいんだろう?」
「カウンセラーにでも通わせればいいんじゃないか?」
「……いくらカウンセラーでも異世界に召喚されたけど屑ばかりで酷い目に遭ったって言われたら匙を投げると思う」
「だな。こっち関係の霊能力者もいるが、異世界帰還者っていうのは稀だからな……対処できるかどうか」
「はぁ。困ったなぁ」
「だな」
夏樹と千手は、佐渡家から少し離れたファミレスの喫煙席にいた。
夏樹はアイスティーを飲み、千手はコーヒーを飲みながら電子煙草を吸っている。
ここにいない祐介は、夏樹が外で軽く昼ごはんでも食べようと誘ったところ、身だしなみを整えたいとお風呂に向かったので、先にファミレスに行って待っていることにしたのだ。
「子供に言うことじゃないが、男がなんかあったら女に癒してもらうっていうのもひとつだぞ」
「本当に子供に言うことじゃねーな。でもさ、話を聞く限り女性関連でもトラウマあるだろう人に女性をどうしろって言うんだよ」
「金を渡してプロに」
「そんなんで心が癒えるの!?」
「癒える奴もいる」
「ほえー」
大人ってわかんない、と呟きながら夏樹はアイスティーを飲んだ。
祐介は無理やり女性と肉体関係を持たされていたようで、苦手意識がある可能性もある。また、言葉では悪態をついていたが、おそらく信頼していた少女にも裏切られている。
誰ひとりとして異世界人に心を開かなかった夏樹に対し、祐介は少なからず異世界人に心を開いてしまったようだ。そのせいで心の傷も大きいと思われた。
(異世界人なんて俺からすれば、宇宙人よりもよくわかんない種族だからなぁ。会話して同じ人間だとか思えなかったもん。きっと、地球に地底人がいても異世界人よりも仲良くなれる自信があるんだけどなぁ)
「おい、由良」
「ん?」
「あまり口を挟むのはどうかと思うんだが、辛い思いをしたのならその記憶を消すことはできないのか?」
「俺にはそういうことは」
「お前じゃなくて、神や魔と知り合ったのなら、その辺なんとかならないかって聞いているんだよ」
「いや、俺に言われても」
「ここだけの話……霊能関係で酷い目にあった被害者の記憶を消すことはある。だけどな、おいそれとやっていいことじゃないんだよ。記憶がなくなっても心の傷までは消えないんだ。だから、あとで違和感を覚えることもある。だが、それは人間の術者が処置した場合だ。神々ならもっといい感じにならないか?」
「なるほど。そういう考え方もあるのか……わかった。聞いてみるよ」
夏樹の場合は、戦いばかりだった。
桁外れの強さを手に入れる前は、痛みが現実である証だった。
強さを手に入れてからは、現実とか夢とか考える時間が惜しくて、ずっと戦っていた。
ある意味、祐介のようにあれこれ考える時間も余裕もなかったのだ。
「異世界ものって俺も読んだことがあるんだが、リアルってやっぱりクソだよなぁ」
「少なくとも、俺はもう二度と異世界ものを読みたくないかな」
「俺もチートものは二度と読みたくないぜ」
紅茶を全部飲み終え、そろそろ祐介も来る頃かなと考えていると、携帯が鳴った。
知らない電話番号だったが、千手が出てみろと言うので恐る恐る通話ボタンを押す。
「もしもし?」
「あ、出てくれてよかった。わかる? 小梅のママのリリスよ」
「あ、どうもです!」
「ゴッドから勝手に番号聞いちゃったの、ごめんね」
「いえいえ。どうしかしましたか?」
「ゴッドに佐渡祐介くんのこと聞いちゃったんだけど、少し荷が重いと思うの。違う?」
「ええ、実は」
どうやらリリスは、ゴッドから事情を聞いて心配してくれてたようだ。
とてもありがたいと思う。
さすが小梅の母だ、優しい、と夏樹は感動する。
「なら私に任せてくれる?」
「え?」
「ふふふ。傷ついた男の子には女の子よ!」
(あれー? 七森千手と同じこと言ってるー?)