作品タイトル不明
4「ついにゴッドと会うんじゃね?」④
「――は? え? 嘘? 俺のあとに召喚されちゃってるの!?」
後光に包まれたゴッドが頷き、悲しげな声を出した。
「大変残念なことですが、夏樹くんが地球に帰還した後にひとりの青年がかの異世界に召喚されてしまいました。だが、彼は君のように強くなかった」
「勇者じゃなかったってことですか?」
「勇者だったのですが、夏樹くんと比べたら……はっきり言いましょう。弱かったのです。そうですね、夏樹くんが先日戦った小林蓮君のほうが強いでしょうね」
「……うーん。でも、蓮くんでも向こうで魔族相手に無双できそうな気がするんだけど。魔王は多分無理でしょうけど」
蓮の強さは規格外だった。
あの強さで、力の使い方をちゃんと覚えたらどうなるのだろう。
怖さもあるが、興味もあった。
蓮は規格外の力を持つため、比べるのは可哀想ではないかと思う。
「単に弱かったのならよかったのです。鍛えればいいのですから。しかし、彼は心も強くなかった。誤解のないように言いますが、普通の青年です」
「……俺も普通の中学生だったんですけど」
「ははははは! ナイスジョーク!」
「ジョークじゃねーよ!」
「まあまあ。とにかく彼には勇者としての力はありました。強くなれる可能性がありました。しかし、いきなり異世界に召喚され、右も左もわからず戦えと言われました。かつて君に求められた以上のことを求められたのです」
「それは辛い」
「しかも、魔族も勇者が人間だからといって侮りません。むしろ、やる気満々です。夏樹くんのおかげで半壊状態の魔族軍は負けてなるものかと死に物狂いになり、魔神に干渉されておかしくなっていた魔王は本来の聡明さと強さを取り戻しました。せめて、夏樹くんと同等の力があればまだよかったのですが……酷い目に遭いましたよ、彼は。思わずゴッドも同情してしまうほどでした」
相変わらず最低な異世界だと思った。
ゴッドに滅ぼすかと誘われ断ったが、異世界の人間は根絶やしにするべきではないかと本気で思う。
「もともと異世界から地球に干渉するのはルール違反なのです。ゴッド的にもNGです。過去にもありましたが、まさか、同じ世界から二度も短期間でこちらの人間を誘拐されるとゴッドもおこです。激おこです」
「そっか、誘拐か。そうだよねぇ、誘拐だよねぇ」
「中には創作物のように異世界を満喫する者もいます。ゴッド的には本人がよければいいのです。しかし、夏樹くんのように彼のように私の世界の人間が苦しむのはゴッド的には許せません」
「……だから滅ぼそうと」
「そうですね。できることならしてやりたいです。しかし、ゴッドが向こうに干渉するのもNGなのです。ですから、君を助けることはできませんでした。申し訳ございません」
ゴッドは丁寧に頭を下げた。
「あ、いえ、それは気にしないでください。こうして戻ってこられましたし」
「……ありがとうございます。夏樹くんは優しいですね」
「でも、その人はどうやって戻って来たんですか?」
「彼が異世界で亡くなる瞬間に、無理矢理干渉しました。そのせいで、向こうの世界の寿命が縮みましたが、些細な問題です。私にできたのは、そこまでです。彼は夏樹くんのように元の世界に戻ってこられましたが、君と同じように異世界がトラウマとなりました」
「でしょうねぇ」
「しかし、そんな話を誰が信じてくれるのか。誰にも言えず、また召喚されるのではないかと怯え、部屋に閉じこもっています」
「だから、同じ経験者の俺に話をしてくれと?」
「はい。そして、伝えて欲しいのです。二度と召喚されることはない、と」
断言したゴッドに、夏樹は「え? まじ?」と聞き返すと、彼は頷いた。
「そもそも夏樹くんが誘拐された世界は、召喚できる力がもうありません。しかし、世界は無数に存在する。それらの世界に干渉されないように、厳重にブロックしました」
「……そんなことができるんですか?」
「できますが、本来は駄目なのです」
「あれ、でも」
「一時的な措置です。なぜか、他世界の神々はこちらの世界に干渉したがっています。おそらく、地球の人々と他世界の相性がいいのでしょう。いろいろな意味で、ですね。駄目だと言って、守る者ばかりではありません」
「そういうのは神も同じなんですねぇ」
「残念ながら。ここだけの話、三原優斗が傑作的自爆をした時にも他世界から干渉がありました」
「はぁ」
「しかし、ゴッド的には……彼に夏樹くんがほどこした封印が解けない状態で向こうに行っても、何もできないで終わるだけです。それを良しとしません。夏樹くんたちにはおもしろくないでしょうが、死んだ者を貶めるようなことをゴッドは良しとしないのです」
「いえ、そこはいいんです」
「もっとも、干渉を防いでいたので彼をさらうことはできませんでしたがね。こう見えて、ゴッドは世界を管理する者たちの中で上から数えたほうが早い力を持っているのですよ」
「……こう見えてと言われても見えないんですけど、眩しくて」
「おっと、申し訳ない。偉大すぎるせいで後光が眩しい仕様なのです」
「仕様なんだ」
知らなくていいことをたくさん知ってしまった気がしたので、夏樹は苦笑いだ。
「君は興味がないようですが、一応お伝えしておきますね。三原優斗くんの魂は、天国にも地獄にも行けません」
「えーっと?」
「完全消滅しました」
「えぇー」
「愛の女神とは会いましたね? 彼女の力はそれだけ強いのです。魂さえ削るような力を与えられて……自爆とは、ぶふふっ。おっと、失礼しました。唯一、彼の魂が救われる方法は異世界へ行くことでしたが、それも駄目でしたからね。今まで楽しんだので、釣り合いは取れたでしょう」
「うわー」
優斗が完全消滅したことにはさすがに驚いたが、なんとも思わない。
夏樹にとって、三原優斗はそんなものだ。
「ゴッド的には本来は放置ですが、彼と関係があった方々へ時間が経つに連れて忘れてしまうという特典を与えましょう」
「あ、どうも?」
「完全に忘れることはできませんが、あーなんかそんな奴いたなぁ、程度の認識になるでしょうね。さて、三原優斗くんはどうでもいいとして……」
ゴッドにまで「どうでもいい」と言われてしまった優斗だった。
「夏樹くんの後に召喚された青年とお話ししてくれますか?」
「はい。俺でよければ」
「ありがとうございます。私が何度か干渉してみたのですが、警戒心マックスなので、私を邪神かなにかだと勘違いして話を聞いてくれないんです。酷いですよね」
「ノーコメントでお願いします」
こうして夏樹は、同じく異世界に召喚された青年と会うことになったのだった。