作品タイトル不明
間話「天照大神様がダイエットを始めるんじゃね?」②
「私は恋する乙女……乙女? の味方です!」
「乙女でいいですよ! 躊躇わないで乙女と呼んでほしいです!」
「この水無月都。全力で、三原一登君に他の女が寄らないように見張りましょう!」
「きゃーっ、都様素敵―!」
「任せてください。私が本気出せば、年下の女子などひと睨みですよ」
「かっけー! かっけー都様ぁ!」
ダイエットには協力できないが、恋の応援ならできる。
とくに都には『学校の先輩』というアドバンテージがあるのだ。
これを利用して天照大神に取り入ることを考えていた。
(天照大神様に気に入っていただければ、水無月家は安泰。そして、つまりそれはお姉ちゃんの安泰!)
「しかし! ライバルが現れないようにしても、まず天照大神様が変わらなければなりません!」
「――え?」
「まずは、部屋の片付けからです」
「――ちょ、ま、待ってください。この部屋に掃除の必要が?」
雲海によって掃除された部屋なので、さほど汚くないのになぜ、と天照大神が首を傾げる。
「きっと控えめに言っても天照大神様のためにならないのではっきり言います」
「ど、どうぞ」
「この部屋酒臭い!」
「え?」
「飲み終わったら、缶をちゃんと洗ってゴミに捨ててください! その日、酔っ払っていてできなくても翌日できるでしょう! なんなら神の力でゴミを消すとかしてください! 次に、お布団は干しましょう! 臭くはありませんが、積み重ねが大事です! 換気は……神域に換気の意味があるのかわかりませんが……いえ、そもそも神域に引きこもっていないで、ちゃんと用意したお部屋に戻してきちんと生活をしましょう。規則正しく生活するだけで、肉体は変わっていきます。まずはそこからです」
「あ、この子。雲海おばあちゃんに似てる」
天照大神は助けを求めようとして澪に視線を向けるが、澪は残念そうに首を振るだけでした。
「ついでに、ビールもこの際やめましょう。飲んでも毎日ではなくて、週末とかにすればいいんです。本数を減らすとかすればそれだけでお痩せになるのでは?」
「……そ、そんな」
「別に酒を飲むなと言っているんじゃないんです。太らないようにほどほどにと。そういえば、夏樹くんたちと会ったときになんでしたっけ、ウイスキー? そちらはどうなんですか?」
「えっと、ハイボールなら糖質はないです。カロリーはありますけど、肉体にはあまり蓄えられないカロリーなので」
「なら、普段はそちらにしましょう。少しずつ、量を減らし、いずれはノンアルコールです!」
「いやぁあああああああああああああああああ!」
水無月都は、しっかり者だ。
性格に少々難があるにはあるが、努力を欠かさない、自分に厳しい子だ。そんな都にとって、自堕落な天照大神の生活はあまり好ましいものではなかった。
いい機会なので天照大神の生活を正し、あわよくば評価されたいと企んでいた。
「よく言った、都!」
すぱーんっ、と神域が勢いよく開かれ雲海が入ってきた。
「ちょ、おばあちゃん! 神域を襖みたいに開けないでください!」
「ええいっ、この雲海! 神域の外でこっそり聞かせていただいておりました!」
「聞いて!」
「実は雲海も天照大神様にダイエットは必要だと思っておりました。そのだらし……わがままボディーをなんとかしたく!」
「今、だらしないって言おうとしませんでしたか?」
「そこで! 先日、夏樹殿に破壊された水無月家を急ピッチで修繕し、ジムとサウナを完成させました!」
「え?」
「は?」
「ほえ?」
雲海の爆弾発言に、澪、都、天照大神が間の抜けた声を出す。
「そして! 先生、先生! どうぞ、先生!」
「ヘーイ! あなたが照子ちゃんねー! 私はジェシー! あなたをスレンダーボディーにしてあげるわー!」
「特別講師も準備させていただきました!」
「いやぁああああああああああああああああああああああ! 腹筋の割れたブロンド美人が用意されているぅうううううううううううううううううう!」
「ちょうどお仕事を探していたジェシー殿と話が合いましてね。聞けば、母国でインストラクターをしているようでして、ならば、と!」
「雲海おばあちゃん、コミュ力高っ! 無駄に高っ!」
「ちなみに伊邪那美命様からのご許可も得ております」
「終わったぁああああああああああああああああ!」
ジェシーは、スキニーパンツにお腹を露出してしまうほど丈の短いTシャツの上にパーカーを羽織った美人だった。
波打つブロンドヘアーを揺らし、人懐っこい笑顔を浮かべている。
都と澪も、さすがに雲海が海外のインストラクターを天照大神のために用意するとは思っていなかったのでびっくりしている。
「ヘーイ! 澪も、都も、もう少し筋肉をつけましょー! もっとナイスガールになるよー! 茅も参加だから、みんなで頑張ろうねー!」
「お母様も!?」
「……参加するの?」
「茅は最近、身体を動かしていないので天照大神様のようになる前に適切な運動を、と思ったのだ。もちろん、私も一緒に行おう! 天照大神様だけに辛い思いはさせん! 断じて私が最近太ってきたのを気にしてではない! そこは間違わないでいただこう!」
「おばあちゃんおばあちゃん、言ってる! 聞いてないのに自分から言い訳してる!」
こうして雲海が連れてきたジェシーによる天照大神ダイエット作戦が幕を開けたのだった。