軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「さまたん複雑じゃね?」

※注意※少し未来のお話です。

「ありえん! ありえないだろう!」

かつてサタンと魔王の座をかけて戦ったサマエルは、パソコンを前に身震いしていた。

その理由は、動画配信にある。

サマエルは農業系女子魔族さまたんとして動画配信をしていたのだが、泣けるほど人気がなかった。

何本も動画をアップしても、数百アクセスしかない日々。

だが、それでもよかった。

毎回数人のリスナーが応援のコメントをくれるのだ。ときどき動画配信をすれば、見にきてくれもする。

かつてサマエルを暖かく迎え農業を教えてくれた老夫婦の残してくれた林檎畑が素晴らしいものだと、わずかな人に伝われば満足だった。

サマエルの作る林檎は評判がいい。

近所の農家と連携し、よい林檎を作れるように情報交換をしているし、林檎以外にも畑があり、近所からの差し入れなどもあって自給自足にも困らない。

サマエルは今の生活を気に入っていた。

――しかし、急にお気に入りが五千人を超え、最新動画が一万アクセスを超えてくると、動揺を隠せずにいた。

「見てくれるのは嬉しい! 嬉しいのだが……」

コメント欄をスクロールすると、コメントを書いてくれたリスナーたちの語尾がすべて「まもんまもん」だった。

「……マモンを見にきているだろう、これ!」

きっかけはショート動画だった。

サタンの命によってサマエルの動画登録者を百万人にするまで魔界に帰れません。と、なってしまったマモンは、戦略を考えた。

そこで、いきなり十数分からの動画を見てもらおうとせず、六十秒という短い動画でどれだけ興味を誘うか悩んだ。

結果、サマエルではなく、マモン自ら動画を撮ることに決めたのだ。

『七つの大罪の強欲を司る魔族だが勇者に敗北したので敬愛する上司のもとで炒飯作ってみた』

これがいい感じに受けた。

庭でフライパンを振るい、金色に輝くチャーハンを作った。そして、食べながら「まもんまもん」と満足そうにしている。

最初こそ、三十後半のおっさんがスーツ姿で何をしているんだと思われていたようだが、「まもんまもん」という語尾に惹かれた人間が、ひとり、またひとりと集まり、コメント欄は「まもんまもん」で埋め尽くされていたのだ。

ちょっと調子に乗ったマモンは、本編動画にも登場し、林檎を収穫したり、畑で大根を収穫したり、林檎を盗みにきた窃盗団と戦ったり、とそれはもう大活躍だった。

意地でもスーツを脱がず、しかし、汚れるのは嫌なようで長靴と軍手だけは装備したマモンが、さまたんの背後で農作業しながら「まもんまもん」言っている姿に、ふらりと動画に流れてきた人々がときめいたのは言うまでもない。

少しずつ、さまたんも人気が出てきてはいるのだ。

海外出身の美人なさまたんがもんぺを装備して農作業する姿にはギャップがあっていいという声が多い。

だが、同じくらい海外のイケおじ風マモンが「まもんまもん」言いながらサマエルを慕い、農作業し、日々の疲れを取る、食事をするのが受けたのだ。

「……まずい。まずいぞ。このままではさまたんチャンネルが、まもんまもんチャンネルになってしまう!?」

マモンは純粋にサマエルのために頑張ってくれている。

今もスーツの上に割烹着を着て、料理中だ。

しかし、一度抱いてしまった危機感はなかなか払拭できずにいた。

「……収益化か……マモンのおかげだと素直に喜ぶ自分と、マモンがいなければ無理だったと卑屈な自分がいる」

「サマエル様ー! ご飯ができました! まもんまもん!」

「ああ!」

「今宵は、マモン特製まもんまもん餃子とまもんまもん炒飯、そしてまもんまもん杏仁豆腐ですよー! まもんまもん!」

「それ、具材はちゃんとしたものだよね!? 食べたら語尾がまもんまもんになる奴じゃないだろうな!?」

「まもんまもん! サマエル様は面白いことをおっしゃる!」

「お前が一番面白いよ!」

そして、今日も更新した動画はまもんまもん旋風を起こし、またチャンネル登録者が増えていくのだった。