軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「天照大神様がダイエットを始めるんじゃね?」①

「澪ちゃん、都ちゃん! 自分、ダイエットを始めようと思います!」

「……えっと、がんばってください?」

「……どうぞ」

水無月澪と妹の都は、天照大神の神域に招かれたことを最初こそ光栄に思っていたのだが、しょうもない宣言をされたので反応に困っていた。

年頃である澪と都の部屋はしっかり整理整頓と掃除がされているのだが、天照大神の神域は普通の六畳間という感じで、正直、姉妹の部屋よりも狭い。

だが、それはいいのだ。

部屋の広さは好みだ。都は大きな部屋が好きだが、澪は狭い部屋の方が落ち着くタイプなので人それぞれだ。

問題は、どことなく、天照大神の部屋はぐちゃーっとしているのだ。汚いとまで言わないのだが、もう少しちゃんとしてほしいと思ってしまう。

そんな神域で、丸テーブルを前に座布団を用意してもらい座る澪と都が、神が何を言っているのだ、と冷たい目をしようとして、慌ててやめる。

気さくなので忘れそうになるが、天照大神といえば誰でも知る太陽神だ。本来ならば、いくら名家の人間とはいえ、澪や都ではお目にかかることなどできない。

――だが、それはそれこれはこれ。ダイエットなどと言い出した神に、水無月姉妹の敬う気持ちがちょっと減った。

「対応が冷たいです! 一緒にダイエットしましょうよ!」

「あたしはあまりダイエットは……食べても太らないので」

「う・ら・や・ま・し・い!」

「お姉ちゃんに減らすところなどありません!」

「……妹さんはなんか怖いです」

姉ラブである都の勢いに、天照大神もちょっと押され気味だ。

同時に、思う。

弟がふたりいるが、こんなに慕われたことなど一度もないと。

「あの、質問いいですか?」

「どうぞどうぞ」

「なぜダイエットをしようと思ったのでしょうか?」

澪の疑問に、表情を暗くした天照大神。

同じ頃、神域の外で晴れていた空が曇りに変わった。

「……先日、サマエルさんが来たじゃないですか」

「はい」

「すらりとした美人さんでしたね」

「……そう、ですね」

「小梅さんも美脚の美人さんですし、銀子ちゃんもモデルさんのような美人です……中身はおっさんですけど。というわけで、天照大神的に危機感を持ったのです!」

「……今更?」

「こら、都。今更とか言わない。思っても、言わないの。めっ」

「お姉ちゃんの『めっ』ありがとうございます!」

「……やっぱりこの妹さんちょっと変かもしれませんね。ま、まあ、些細なことです」

凛とした感じの少女が姉に嗜められると表情を蕩けさせる姿はちょっと怖かった。

「あの、天照大神様、なぜ私たちも?」

「この際、正直に言いましょう。ひとりだと達成できる自信がないので付き合ってください!」

「…………」

「うわー」

澪は無言を貫いたが、都は口に出して引いていた。

ダイエットをしようと思った割には、意志が弱いようだ。

「天照大神様、雲海おばあちゃんに厳しくしてもらえばすぐに痩せるかも……です」

「……いえ、別にげっそりしたいわけじゃないんです。頑張っても美脚は手に入りませんからね。まず出っぱったお腹から凹ましたいなと思いまして」

「……ビールをやめたらどうですか? 太るみたいですよ?」

「残念ですが……ビールは水なんで飲まなきゃ死んじゃうんです」

「なら、仕方ないですね」

「そうなんです」

うんうん、と頷く天照大神と澪に、都が突っ込んだ。

「いやいや、ビールはビールですから! 水を飲めばいいじゃないですか! 水を! 私なんて太らないようにジュースなんて飲みませんよ! 飲んだとしても時々です! その分身体を動かしますし!」

「……糖質を七割カットしているのでセーフです! ビールとジュースを一緒にしないでください!」

「じゃあ運動しましょう! どうですか、軽く水無月家の周りを一周走りましょう!」

「え? 水無月家の周りって、山じゃないですか?」

「ええ、山です! 少し悪路ですが、だからこそ走り甲斐があります!」

「……あの、自分、神域から出るだけでも大変なんですが。山で動けなくなったら担いでくれますか?」

本当に天照大神か、と疑いたくなるような発言に都は思わずボソリと「――めんどくさ」と言ってしまう。

天照大神も聞こえたようで、顔を引き攣らせていた。

「もう面倒なんで神様の力でなんとかできないんですか?」

「……数分で、神に対しての敬意がなくなっちゃいましたね! でも、嫌いじゃないです、そういう対応!」

「いいですから、神の力でお腹凹ましてください!」

「……神の力は万能じゃないんですよ。何百年かけて蓄えた脂肪は……天照大神、素盞嗚尊、月読命、伊邪那岐命、伊邪那美命が集結しても減らせません」

「……では、もう残念ということで。お疲れ様でした。行きましょう、お姉ちゃん」

立ち上がって神域から出ていこうとする都の足に、天照大神が縋り付く。

「見捨てないでください!」

「離してください!」

「嫌です! このぽよんぽよんのお腹からさよならして、一登きゅんとデートしたいんです!」

「え?」

「へ?」

都と澪は、テーブルに戻ると、天照大神をじいっと見る。

「な、なんですか?」

「天照大神様って、本当にあの子が好きなんですか?」

「もうっ、都さんったら、そんな好きとか言わないでくださいよ! 照れちゃいます! ――いえ、愛していますけどなにか?」

急に真顔になった天照大神に、ちょっと押され気味になった都だったが、負けじと声を出す。

「なるほど。三原一登くんでしたね。……そういえば、彼は私の後輩なんですよね」

「――っ」

「クラスメイトに知り合いもいるんですよね」

「――っっ」

「……写真とかほしいですか?」

「水無月都様に、忠誠を、誓おう!」

「え? なにこれ?」

急な展開に澪はびっくりして目をぱちくりしていた。