作品タイトル不明
エピローグ「幸せなんじゃね?」
夏樹、小梅、銀子は三人でゆっくり河原を歩いていた。
一登を含めた四人で、らーめんを食べ、ようやく一息つくことができた。
夏樹は午後をサボることを決めたが、一登は学校には顔を出すようで途中まで送って別れている。
不仲であったとしても、兄が目の前で亡くなったのだから精神的な負担はあると心配なのだが、他ならぬ一登自身が学校に行くと言ったので止めることはしなかった。
優斗の亡骸は、水無月家が預かっている。
後日、事故に遭って亡くなったと三原家に連絡がいくだろう。
そのとき、ご両親がどう思うのかは、夏樹にはわからない。
ご家族のことを思えば残念に思うが、夏樹としては冷たいだろうが「どうでもよかった」。
今までの鬱陶しい因縁が消えるとか、もうくだらないことに巻き込まれずに済むとか、さえ思わない。
所詮、その程度の関係だったのだろう。
(もう優斗のことは考えることをやめよう)
のんびり河原を歩きながら、「お腹いっぱいっす!」「人の金で食うらーめんはうまいんじゃ!」と楽しそうにしている銀子と小梅の背中を眺めて、無事に戦いが終わってよかったと思う。
巻き込まれた形になったが、小梅が利用されることはない。
また彼女に何かがあれば、どんな相手が来ようと夏樹は戦い、そして勝つだろう。
(なーんていうか、出会ったばかりなのに銀子さんのことももちろんだけど、小梅ちゃんがめちゃくちゃ大切な存在になっちゃったなぁ)
この感情が恋か、愛か、家族愛か、親愛か、夏樹の心の中で答えが出ていない。
だけど、小梅のためなら命を懸けられるくらいに大切だ。
もちろん、銀子であってもその気持ちは変わらない。
「そうじゃ、夏樹」
「うん?」
振り返った小梅が、にっこりと笑顔を浮かべていた。
「マモンと戦わせてすまんかったな。俺様が美人なせいで、本当にすまん。だが、勝ってくれると信じておったぞ!」
「少々やりすぎなところもありましたけど、これで小梅さんに手を出すお馬鹿さんもいなくなるでしょう。やったね、小梅さん! 一生独身っすよ!」
「ぬかせ! 俺様が生涯独身なら、銀子も同じじゃろう!」
「なにおう!」
いつも通りの、やりとりに夏樹も笑う。
銀子にヘッドロックを決めながら、太陽を背にブロンドの髪を靡かせた小梅は大きな声で告げた。
「――夏樹、大好きじゃぞ!」
突然すぎる告白に、夏樹は驚いた。しかし、同時に自分の心にある感情の答えを知った。
「俺もだよ、小梅ちゃん」
「あったりまえじゃ!」
太陽のように笑う小梅に、夏樹は頬が熱くなる自覚があった。
「ちょちょちょ、なに勝手に抜け駆けしているんですか! 今回はたまたま小梅さんイベントがあっただけで、次は私への復讐者が現れて大ピンチになったところを夏樹くんが王子様のごとく助けてくれるっすよ!」
「はーはっはっはっはっ! 俺様の一歩リードじゃ! 俺様は美女な天使じゃが、ここぞというタイミングは外さない天使でもあるんじゃ! まもんまもん!」
「小梅さん! まもんまもんが感染してるっす! やばいっす!」
「なんじゃとう!」
ゲラゲラ笑う小梅と銀子に、夏樹も釣られて声を出して笑った。
甘酸っぱい雰囲気ではないし、男女の艶やかな関係ではない。
だけど、今の、こんな空気が夏樹にはなによりも愛おしかった。
「夏樹くん、私も大好きっすよ!」
「俺もだよ、銀子さん!」
「……あれ? なんか小梅さんのときの方が気持ちが籠もってませんか?」
「ふははははは! 俺様の勝ちじゃ! じゃが、俺様は美しすぎる天使じゃが、寛大な天使でもあるんでのう、百八番目の側室にしてやろう!」
「まだ百人も増えるっすか!? せめて第二夫人にしてくださいよ!」
――異世界から帰還して、八日しか経っていないが。
由良夏樹はものすごく幸せだった。