作品タイトル不明
73「一登が最強じゃね?」
「独占? なんのことだ? 私はただファンであるかずたんとの交流を行っているだけだ。そうだな、意図せぬオフ会という感じだ」
「うぇーい、うぇいうぇいうぇいうぇい! 底辺動画配信者が生意気にオフ会なんて言ってるんじゃないですよ! あと、なんですか、かずたんって! さまたんとかずたんでたんたんたんってするつもりですか!?」
「……すまないが、お前の言っていることは理解できない」
ああん? と、詰め寄る天照大神にサマエルは少し困惑気味だ。
一登も少し驚いた顔をしている。
「……素面なのに絡んでくる太陽神って嫌っすね」
「最悪じゃな。こんなん信仰している日本人は泣いてええじゃろう」
「そこ! おシャラップ! 自分はね、許せないんですよ。動画なんかで有名になって年下の男の子をぱっくんちょしようと企む奴がね! オフ会なんて、どうせいやらしいことすることしか考えていないっすね!」
「おまっ、大手動画サイト様にぶっ殺されると思うんじゃが!?」
絶好調の天照大神は言いたい放題だ。
小梅も銀子も、仮にも想い人の前でよくここまでできるな、とちょっと見直した。
「よくわからんが、お前が動画配信をしたいことは理解した。任せろ、このさまたんがプロデュースしてやる」
「……その自信はどこからくるんですか? さまたんの登録者三十人じゃないですか。神話や逸話的にくっそ面白いこと言っていますけど、人間には通じないんですよ!」
「あ、照子ちゃん的にはさまたんの動画おもしろいんだ」
怒っているのか褒めているのかわからない天照大神もおかしいが、プロデュースをしようと堂々というさまたんも大概だ。
「じゃが、いいではないか? ダイエット系動画配信者デビューじゃ! 五キロ痩せるまで、太陽隠してみたとかどうじゃろうか?」
「……小梅さん。一応、自分は太陽司ってるんで、ちょっとそういう方向性は難しいです。他の太陽神さんから怒られますし、パパとママからどつかれて、月読からお説教コースになるの間違いないです」
「ふむ。ならば、体重が十キロ減るまで天岩戸をサウナにしてみたとかどうだろうか?」
「死ぬわ!」
小梅とサマエルも、西洋方面の神と魔なだけありスケールがでかい。
「さっきも言いましたけど、自分がSNSで天照大神を名乗ったら炎上間違いないですからね! 本人なのに絶対信じてもらえませんから!」
「それも悲しいっすね」
「言わないでください! あ、じゃあ! 体重十キロ減るまでとある農家から太陽の光遠ざけてみた、とかどうでしょうか?」
「――まさか、それは私の畑を言っているのではないだろうね?」
「どうでしょうかねぇ。年下の男の子をたぶらかすような農家さんはいらないんですよ」
「……ほう」
空気が張り詰めた。
サマエルからは濃密な魔力が、天照大神からは溢れんばかりの神気が迸る。
「なにが気に入らないかわからないが、私の畑は行く当てがなく彷徨っていたところを拾ってくださったおじいちゃんとおばあちゃんから譲り受けた大切な畑だ。それを害しようというのなら、この国ごと潰すぞ」
「スケール! スケールがでかいっす! それ、おじいちゃんとおばあちゃんの畑ごと潰してますよ、さまたん!」
「はっ! ならば、自分はあまたの土地の肥料の効果をなくすように土地神に命令してやりますよ」
「スケールちっちゃ! あと、せめて自分でやりましょうよ! 地味! 地味にこすっからい!」
「……銀子。ツッコミ絶好調じゃのう」
「夏樹くんの代わりって大変っすね! 早くボケる側に戻りたいっすよ!」
さて、どうやって収拾をつけようとかと銀子と小梅が考えていると、
「照子さんはそのままで素敵ですよ」
「――か、一登きゅん」
「さまたんもせっかくの綺麗な顔が台無しになっちゃうから、ほら、笑って笑って」
「う、うむ。かずたんがそう言うなら」
「ふたりともせっかくなんだから仲良くしようよ。ね」
「……仕方が、ありませんね」
「かずたんが言うなら、そうしよう」
一登の一言でふたりの力が霧散した。
ふたりとも、とりあえず表面上はにこやかに握手までしてしまう。
心なしか、手に力がかなり入っている気がするが。
「一登くんやばいっすね!」
「魔性じゃろう!」
女の争いを笑顔ひとつで収めた一登に、銀子と小梅は拍手した。