作品タイトル不明
72「ご両親もビッグネームじゃね?」
伊邪那岐命といえば、日本人のゴッドファーザーと言える存在だ。
そんな神が、なぜ小林蓮を預かろうとするのかわからず、銀子は首を傾げてしまう。
「えっと、なんでって聞いていいっすか?」
「なんでもなにも、パパは霊能力を持ってしまったがゆえに生活に困っている子供を保護しているんですよ。小林蓮君のように、悪党にずっと利用される子っていうのも決して少なくはないんです。ちょっと話をしてみたら、彼と彼の保護する子供たちをまるっと預かってくれるみたいですよ。ママも乗り気だって言ってました」
「……ママって」
「そりゃ、伊邪那美命です」
「はい、またビッグネーム! ふぅー!」
叫んだ銀子に、話をしていた一登とサマエルがびくっとして視線を向けた。
そんなことを気にせず、銀子は頭を抱えて続けた。
「伊邪那岐命と伊邪那美命が一緒にいるってどういうことっすか!? やべー離婚の仕方したのに、まずくないっすか!?」
「やだなぁ、銀子ちゃんったら、パパとママが離婚したのは二千年以上前っすよ。今じゃ、仲直りしてっていうか、一方的にママにぼっこぼっこにされてごめんなさいしたから、喧嘩しつつも仲良く暮らしていますよ」
「まじかー。まじかー!」
「というか、銀子ちゃんはウチに遊びに来たときに、パパとママと会ったじゃないですか」
「あ!」
銀子がまだぴちぴちの女子高校生だった頃、天照大神が人間に扮した天野照子と親友だった。
趣味で意気投合したふたりはあっという間に親友となり、こっそりと陰ながら活動していた知る人ぞ知るとある部活に所属し、様々な作品を生み出す活動もしていた。
親友ゆえに、銀子は照子の家に遊びに行ったこともあるし、なんならお泊まりしてご飯をご馳走してもらったこともある。言うまでもなく、照子のご両親と食卓を囲んだ。
「マジっすかぁああああああああああああああああああ! 私、天照大神と伊邪那岐命と伊邪那美命と一緒にハンバーグ食べてたっすぅううううううううううううううう!」
「ご家庭的な晩御飯じゃな」
「めちゃくちゃ美味しかったっすよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
高校卒業後、警察官になって悪人や悪霊をばったばったと薙ぎ倒す日々が忙しく、照子と疎遠になっていたが、まさかこのような形で再会するなど銀子も予想していなかった。
「あ、ちなみに、銀子ちゃんがお泊まりしているときに、親戚のお姉さんがお野菜くれたじゃないですか?」
「そんなこともありましたね。まって、待ってほしいっす、あれでしょ! きっと神っすよ!」
「ええ、火之迦具土神さんです!」
「はい、死因んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」
銀子は叫びすぎて喉が痛くなり、頭も痛くなった。
ファンタジー側の人間だったはずが、自分の立っている場所などまだまだ浅瀬だったことを思い知らされる。同時に、夏樹と出会って一週間でファンタジーの深淵を覗いてしまった気がする。
夏樹と出会ってからの日々は、今までにないほど楽しいのだが、一日に得る情報量が多すぎるのだ。
「まあ、そんなことはいいんです。とーこーろーでー! そちらのサマエルさんは、いつまで一登くんを独占しているんでしょうかねぇ!」