軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

69「いろいろ事情があるんじゃね?」①

水無月家の客間のひとつを借りて、夏樹はマモンと蓮と三人で向かい合っていた。

「サマエルさんとか、優斗とか愛の女神とか、ゴッドとかいろいろ介入があったけど、改めて話をしよう」

「……そちらの要求はなんでも受け入れる覚悟だ。俺は強欲な魔族ではあるが、自分の弱さに向き合う魔族でもある。まもんまもん」

「…………」

サマエルは潔く敗北を受け入れ、夏樹の要求を呑むつもりでいると言ってくれた。蓮は、夏樹を見て黙っている。なにか言いたいことがあるのかもしれないが、今は話を進めるのを先にして夏樹はマモンにはっきりと告げた。

「マモン。あんたがサタンさんに喧嘩を売ろうと、サマエルさんをトップに立たせようと、語尾をまもんまもんしようとどうでもいい。ただ、小梅ちゃんは俺にとってかけがえのない大切な人だ。二度と手を出すな。次は絶対に殺す」

「――承知した。小梅・ルシファーに、いや、由良夏樹の家族たちには絶対に害をなさないと約束する。俺を、蓮を生かしてくれて、心から感謝する」

マモンは夏樹の殺意の込められた視線をまっすぐに受け止めたあと、深々と頭を下げた。

蓮も同じく頭を下げる。

「約束してくれればそれでいいよ。俺も、つまらない戦いはしたくないし、殺しもしたくない。なによりもくだらないことに関わりたくないんだ。あんたたちにとっては理由があったんだろうけど、こっちはないんだからさ」

「……わかっている」

「わかってくれたなら、もういいよ。俺もネチネチ言いたくないんだ。でも、ひとつだけ。小梅ちゃんにも謝ってね」

「そうだな。サタンと戦おうとするあまり小梅を人質にしようなどと俺は紳士でなかった。小梅には謝罪しよう。まもんまもん」

「……僕も、あの天使さんに謝りたい。生きているんだよね?」

口を開いた蓮が気にする天使はアルフォンスのことだろう。

「アルフォンスさんなら元気だよ。正直、彼を殺していたら、ゴッドが復活させてももう一度殺してい……いや、やめよう。ごめん。もう文句を言ったんだ、これ以上責めたくない」

「うん。ごめん」

万が一を考えると、つい口が勝手にふたりを責めてしまう。

異世界では仲間も友人もおらず、ひとりで戦ってきた夏樹だからこそ、家族や仲間の大切さを痛いほどわかるのだ。それゆえに、アルフォンスや小梅に何かあったとしたら、正気でいられなかっただろう。

「それで、あんたらはこれからどうするんだ?」

「……マモン的にはペナルティはあるだろうが、そんなものだ。魔族は血の気が多いのが多いので、大きな戦争こそないが小競り合いくらいはよくある。俺のしようとしたことは大きなことだと思うが、結果だけ見たら大したことのない範囲で収まってしまったのでな。由良夏樹には不満だろうが、サタンがそもそものらりくらりとしているから俺の処遇は重くならないだろう。まもんまもん」

「……僕はどうすればいいんだろう?」

マモンに関しては、魔王であるサタンに丸投げするつもりだ。

彼も小梅を狙われたので、それなりにペナルティを下すだろう。ルシフェルなどは、夏樹以上にネチネチ言いそうだ。

しかし、蓮の場合はどうするべきなのか夏樹もわからない。

謝罪はしてくれたし、夏樹も殺すつもりで身体を両断し、ゴッドの介入がなければ死んでいたのだから、個人的にはもういいと思っている。

だが、話を聞けば、はぐれ霊能力者として裏家業もしていたようで、そちらをどう判断していいのかわからない。

「水無月家に聞いてみるのがいいと思う。俺から聞いてみるよ」

「……ありがとう」

「なあ、小林蓮」

「なにかな?」

「ちょっとだけ疑問だったんだけど、どうしてあんたはマモンに付き合ったんだ? 雇われたっていうのはわかる。だけど、命懸けで戦う理由がなにかあったのか?」

夏樹の問いに蓮は一度だけマモンを見ると、少し恥ずかしそうに教えてくれた。

「マモンさんは初めて僕に優しくしてくれた大人なんだ。僕と子供たちと一緒に、ご飯を食べてくれた初めての人なんだ。僕には、それがどれだけ嬉しかったか……だから、マモンさんのために戦ったんだよ」

「……そっか。なら、命懸けるよな」

蓮のまっすぐな気持ちに、マモンは少し照れているようだった。顔が赤い。

「……食事をしたといえば、愛ちゃんはなにをしたいんだろう?」

蓮にとって、愛の女神こと愛ちゃんも一緒に食事をしてくれた仲間だ。

彼女の行動理由は気になるのだろう。

「……そういえば、愛の女神がお前たちにけしかけた少年は友人だったようだな。お悔やみ申し上げる。まもんまもん。一般の人間を巻き込むつもりは俺にはなかった」

「あ、いえ、友人じゃないんで平気ですー」

「……それでいいのか? マモン的にびっくりなのだが」

「俺はね。ただ、一登がなぁ。あんな男でも、兄貴だったから」

「そうか。気落ちしていなければいいな。まもんまもん」

「気を遣ってくれてありがとう。だけど、できたら、その愛の女神がなにをしたいのか教えて欲しいんだけど」

マモンは少し考えたあと、「まもんまもん」と頷いた。

「いいだろう。あれだけ関わってしまったのなら、話をするとしよう。まもんまもん」

「助かるよ、まもんまもん」