作品タイトル不明
21「銀子さんと接触じゃね?」④
音を立てて特殊警棒が見えない「何か」にぶつかった。
「あら?」
「これが神となった私の力だ! いくら武器が得意であっても届かなければ意味がない!」
「そりゃそうっすね。ごもっとも!」
銀子は頷くと、左腕の袖からもう一本特殊警棒を抜くと手に取り伸ばす。
「んじゃいきまーす!」
特殊警棒は中年教師の左くるぶしを狙った。
やはり見えない壁が防いだ。
殴った反動で手が痛くなる。
が、特に気にせず、今度は右手に握る特殊警棒で中年教師の右側頭部を狙った。
「――ひいっ」
不可視の盾だか結界だかわからないが、攻撃を阻む能力を持っているはずの中年教師が地面を転がった。
銀子がにんまりと笑み浮かべた。
「銀子さんわかっちゃったっす! 見えない一枚の壁っすね。だと思ったんすよ」
最初の一撃で、震えた空気の感覚で「なんとなく」一枚の壁に阻まれていると思った。
壁は自在に動かすことができるが、大きさが決まっている。
だから、左くるぶしを狙った後に右側頭部という反対側で高さも違う場所を狙ってみた。
中年教師はふくよかな体型をしている。あまり戦闘面が得意とは見えなかったので、壁を動かすのは遅いと考えた。
自慢だが、銀子の反射神経は凄まじい。弾丸だってみて弾くことができるほどだ。
現場で培った経験は、銀子の才能を高く引き上げている。
中年教師は銀子のことを知っているようだが、彼女が知る銀子よりも今の銀子の方がずっと強い。
「とりあえず腕に二、三本追って折っちゃうっすよー!」
「う、腕は二本しかないわよ!」
「嫌っすねぇ、骨だけならもっと折れるじゃないっすか」
「――ひ」
「まあまあ、自称神様なんすから平気っすよね?」
満面の笑みを浮かべた銀子に、中年教師は怯えた。
それでも、銀子は容赦無く特殊警棒を振り上げた。
「――待って!」
「なんすか?」
「じょ、情報を全て話すから、どうか、どうか、これ以上何もしないで」
「まだなーんにもしていねえっすけど! ああ、でも、別に情報はいらないっす!」
「――え、待って、どうして」
「だって、もっと情報を持ってそうな人が来たっすから。ってわけで、おやすみなさいっす!」
そう言って銀子は全力で特殊警棒を振り下ろした。
鈍い音が響き、中年教師が沈黙した。
「さーて、生徒に教師、そしてまた生徒っすか。それで、君も神様を自称するっすか?」
動かない中年教師から顔を上げて、廊下の向こう側を見る。
こちらを伺うように、制服を着た少年が立っていた。
ざっと三十メートルくらいあるのにわかる。
――彼は強い。
「楽しくなってきましたっすね! ちょっとお茶飲もうとしただけっすのに、まったく、これも全部夏樹くんのトラブルメーカーのせいっすね!」
文句を言いながら、銀子は楽しそうだった。