作品タイトル不明
20「銀子さんに接触じゃね?」③
銀子は意識を失った花音をそっと柱の陰に隠した。
時折、びくんっ、と跳ねることがあるが、問題はないと信じたい。
「さてと――いい加減出てきてもらいたいっすねぇ。生徒を使って様子見っすか?」
銀子が今までとは違った鋭い声を出すと、赤く染めた肩を抑えた中年女性が出てきた。
「――青山、お前……よくも」
「あー、やっぱり先生付きっすよね。気配があると思っていたっすよ。同じ生徒なら助けに来たかもしれないっすけど、明らかに見捨てる気配があったので教師かなって思ったんすよね。実際、教師だったのはさすが銀子さんって感じっすけど、がっかりっす」
「私の生徒をどうしようと関係ないわ」
「そういうことを平気で言えちゃうからこの学校の先生って嫌いなんすよねぇ」
目の前の教師は銀子の記憶にはない。
ただ、相手は知っていそうだ。
個人的に、この学校の教師たちは閉鎖的で、差別的だと思っている。
笹山だけが例外だが、他の教師たちは千手のようにフリーランスになる実力も度胸もなく、銀子のように実戦ができないくらいにしか霊能力がない。
教師も大事だが、実力の伴わない人間が偉そうに生徒に何を教えると言うのだ。
「青山、銀子! お前が在学していた一ヶ月の間に、何をしたのか覚えているか!」
「ぜーんぜん覚えていないっす。いや、これは煽りとかではなく、本気でなにも」
「……霊能力がほぼないに等しく、それでいながら規格外の力を持つ――いや、剣を握ると特別強くなるんだったな」
「微妙に違うっすけどね」
「まあいい。当時は、力が及ばない私たちを馬鹿にしていただろうが今は違う」
「誤解っす。当時は眼中になかったっす! 現在、馬鹿にしているっす!」
「――このっ」
激昂しかけた女性教師は、踏みとどまった。
感情に支配されればその隙に銀子に攻撃されると理解しているのだ。
実際、銀子はわずかでも隙があれば殺そうと考えている。
「青山銀子ぉ、お前がそうやって人を煽ることを得意としているのは知っている。その上で、蹴散らし、踏み潰すのだろうが、そうはいかない」
「私がどんな悪女になっているのか問いただしてえっす!」
「だが、お前など脅威ではない。私は力を得て、――神になった!」
「……あー、この人かぁ」
生徒が力を得て「神になった!」と言うのであれば、可愛いなと思うが、銀子の倍は年齢を重ねていそうな大人が神を自称する姿は痛々しくて見ていられない。
「神になったと豪語する力があるのなら、あの子を使わずに最初から自分でくればよかったっすけどね」
「お前の今の力を見ようと思っただけよ。佐々波も力のオンオフができるからと調子に乗って、心を読めるのなら常に読んでいれば上に立てたでしょうに。愚かな子よ」
「心を読む力があるのに、そういう愚かなことをしないからいい子なでしょうがっ!」
銀子は床を蹴った。
魔剣も何も持っていないが、懐には短剣、ナイフは仕込んでいる。
だが、情報がほしいので、特殊警棒を手にした。
「私、強いっすから、特殊警棒でも斬れちゃうっすけど、その時はその時で敵がひとり減ったってことでよしとするっす!」
「舐めるな! 小娘が!」
「力を得たからと増長しているおばさんなんか舐めないっすよ!」
(自分が狙われたということは、夏樹くんたちも今頃――頑張ってくださいっす!)
夏樹たちを案じながら、銀子は特殊警棒を全力で振るった。