作品タイトル不明
19「銀子さんに接触じゃね?」②
「私の考えていることを知っちゃうとかって、佐々波家っすか?」
「正解! お姉さん、すごいね! 私は、佐々波花音! よろしくね!」
「佐々波家のサトリは有名っすから。ただ、随分と壊れやすいみたいっすけどね」
サトリとは、心を読む力である。
妖怪や民謡に登場する「覚」から能力を同じ読み方にしていると聞いたことがあった。
佐々波家は、サトリの一族である。
ただし、人の心など読まない方がいいとよくわかる一族であり、力が強い者ほど早くに「壊れ」てしまう。
現代では、その力も弱くなり、察しのいい人だと思われるくらいにしか力がないと聞いているが、目の前の少女の自信を見る限り、強いサトリの力があるのだろう。
「オン、オフさえできれば問題ないよ。それに、ほら、自分がいないところで悪口言っている人だっているし。聞くことが多いだけで、根本は同じだよ!」
「まあ、それはそうっすけど」
「人間ね、綺麗事言ったって、お腹の中じゃ何を考えているのかわからないから!」
「同感っす。ただし、例外もあるっすよ。私のように見た目も中身も美人な人間もいるっす」
「…………私の力を知った上で、ここまで自信がある人って初めて会ったかも。自信家なのか、それとも本当に清い心の持ち主なのかわかんない!」
「余裕で後者っすね! 私の心は初夏の清流のように清らかです。あ、魚が跳ねたっす」
「絶対、自信家なだけだね!」
銀子は余裕を崩さない。
佐々波花音がどれだけの力を持っているのか不明だが、見られて困る情報は持っていない。
新たな神々が関わっているのであれば、ある程度の情報は手に入れているはずである。
むしろ、力を使ってリスクを負うのは花音の方だ。
銀子の記憶は綺麗なものばかりではない。
人を殺しているし、自分が関わっていなくとも警察官として凄惨な現場も見ている。
できることなら、知らなくていい情報である。
(あー、でも異世界や、夏樹くんの全力とかは隠しておいた方がいいのかもしれないっすね。まあ、私くらいになれば心の中を読まれるのは最低限にすることはできるんでるんすけど)
「じゃあ、覚悟してね。もし、見られたくない情報があるのなら、私が力を使うよりも早く無力化することをお勧めするよ!」
まるで、無力化してほしい、と聞こえた。
銀子は懐からナイフを抜き、投げる。
花音ではなく、見当違いな方向に投げた。
「えっと、よくわからないけど、残念でした。じゃあ、――サトリ」
花音の瞳が真っ黒になった。
力を使う時の特徴だろうか。
銀子はあえて何も意識せず、読ませた。
隠そうとする情報こそ心の中で浮かんできてしまうからだ。
「あばっ」
「おや?」
「あびゃっ、あばばばばばばばばっ」
花音が変な声を出して震え始めた。
小さかった震えが大きくなり、ガクガクと身体全体を大きく震わせてしまう。
そのまま花音が背後に倒れる。
咄嗟に銀子が受け止めた。
「あびゃびゃっ、じょ、情報量が、おおいっ、おおす、ぎっ! なんで、こんな、卑猥っ、男の子が、えっ、うそ、あっ、あばばばばばばばばばばばばっ、あびゅあっ!」
銀子の腕の中でついに花音が意識を失ってしまった。
「えーっと」
断片的ではあるが、花音が自分の中の何を見たのか理解してしまった銀子はちょっとだけ気まずい顔をした。
「――未成年にはまだ早かったっすね」
残念ならが、この場には突っ込んでくれる人はいなかった。