作品タイトル不明
17「やっぱりいつも通りでよくね?」③
「待ってください、笹山先生! 彼らはいったい、何者なんですか!?」
進藤慎太郎が困惑が混じった大きな声を出す。
無理もない。
一般枠で見学に来た生徒が、A組の生徒を倒してしまったのだ。
まさか、異世界帰りの勇者と愉快な仲間たちだとは夢にも思うまい。
「それは――月読先生、彼のことはどこまで話せば?」
「……そうですね」
笹山もすべてを知っているわけではない。彼も同じく、夏樹が異世界帰りであることは知らないのだ。
事実を知っている月読としても、夏樹が異世界に召喚されて勇者として規格外の力を得て帰ってきてから地球でも大暴れしていると説明しても生徒たちは信じないだろう。
もっと言えば、夏樹本人は「ギャラクシー河童勇者」を名乗っている。
河童が好きな「河童勇者」が宇宙船に乗って宇宙に行ったから「ギャラクシー河童勇者」になったなどとどう説明すればいいのかわからない。
何よりも夏樹はその時のノリと勢いで、「ギャラクシー河童勇者ツヴァイ」「ギャラクシー河童勇者EX」「ギャラクシー河童勇者フォーエバー」などと適当だ。
中学生だからこんなものだろうと思うのだが、それを説明する側としては大変だ。
また、この学校に新たな神が関わっているかもしれないと生徒に言うわけにもいかない。
「夏樹くん、夏樹くん、ちょっとこちらに」
「へい!」
しゅっとこちらにやってきた夏樹に、月読が耳打ちする。
「君のことをどう説明していいのかわからないので、自分が話していい範囲で自己紹介を改めしてもらえますか」
「へい、喜んでっ!」
夏樹は進藤たちの前に立つ。
「どうもこんにちは、由良夏樹です」
「……それ、だけ?」
「あ、はい。それだけですね。申し訳ないけど、初対面の人に個人情報ペラペラ喋るほど馬鹿じゃないんで。俺から何か情報得たいんだったら、拳くらいは交わしてもらわないと」
そうじゃない、と言おうとして月詠はやめた。
近くでは千手も同じだったようで、大きく口を開いているが言葉を吐き出さないように耐えていた。
確かに、夏樹の言う通り、初対面の人間に明け透けに情報を言うべきではない。
情報化社会である現代において、個人情報は大事だ。
夏樹の言っていることは理解できるのだが。
「由良ぁああああああああ! 駄目だ、我慢できねえ! お前、普段は初対面でペラペラ自己紹介してるじゃねえか! ギャラクシーどこ言ったぁ!?」
我慢できなかった千手が突っ込む。
生徒たちが「え? ギャラクシーなにそれ?」と驚いたのは、月読は見えなかったことにした。
「えー、だって、俺だって一応それなりに選んでから情報開示しているよ」
「してるか!? 本当か!?」
「実際、千手さんと初対面の時、ボッコボッコにしただけじゃん」
「――そうだったな」
「はい、そういうことで。あと、一応、言っておくけど――」
「なんだ?」
「この中に、新たな神々の気配があるよ」
「――は?」
千手は生徒たちを見渡した。
進藤たちをはじめとする笹山の担当するB組。
A組の生徒は赤嶺意外が意識を失っている。
「……この中に新たな神々がいるだと」
「違う違う、新たな神々とがっつり接触している人がいるってこと」
「どうやってわかるんだよ、そんなの」
「俺はわかるけど」
「誰だよ?」
「ほら、あの青嶺さんだっけ、口は悪いけど割と俺たちのことを案じてくれた人」
夏樹が視線を向けると、千手も視線を向けた。
「……赤嶺、な。勝手に青くするな」
「うっす」
「由良、まだ何もするなよ。――少し、タイム! 見学組み、全員集合!」
千手は月読を含め、全員を集め円陣を組んだ。