作品タイトル不明
16「やっぱりいつも通りでよくね?」②
「あー、えがった」
夏樹はすっきりした顔をしていた。
「……まあ、このくらいでお姉ちゃんへの侮辱を許してあげましょう」
都も怒りが治ったらしい。
「どうしよう、巻き込まれたからって弱い人たちを殴っちゃった」
反省している一登。
「……僕もつい手を出してもうた」
円も苦笑いだ。
そんな四人の前には、気を失った生徒たちが倒れている。
しかも、ご丁寧に積んであった。
「……どういう、ことだ」
唯一、何もされなかった赤嶺が、A組の生徒たちがわずかな時間で倒されたことに大きな動揺を見せていた。
彼だけではない。B組の進藤兄妹をはじめとした生徒たちも、夏樹たちの行動にはもちろん、この結果に驚きを隠せないでいる。
「えがった、じゃねえから! 大人しくしていなさいって月読先生も俺も口を酸っぱくするほど言ったよな! どうして手を出しちゃうかな!? ガキが調子乗っているんだから、笑ってスルーするくらいしろよ! あと実力差も考えてくれ!」
唾を飛ばす千手は、虎童子を羽交い締めしており、余裕がないようだ。
虎童子も、黒森に千手が悪く言われたことで都と同じように手を出しそうだった。
すぐに気づいた千手が取り押さえたからよかったものの、鬼の力で殴られたら大変なことになっていただろう。
もっとも、現在の虎童子は「ダーリンったらそんな情熱的に抱きしめて――ぽっ」と、怒りはおさまっている。
「ま、いつも通りじゃ。このままの勢いで、新たな神々をぶっ殺して学園見学終了でええじゃろう」
「よくありませんからね。あの、小梅さん、手を出さなかったことには感謝しますが、夏樹くんたちを止めてくれませんか? ストッパー役を期待していたのですが……」
力無い月読に、小梅はきっぱり言い放った。
「俺様がそんなことできるかっ! そもそも、小僧が突っかかってくるのが悪いじゃ。これで、夏樹が弱かったら、ボコされていたのは夏樹なんじゃが?」
「それは、はい、そうですね」
月読も、いくらなんでも教師を前に他家を貶める言動をした挙句、暴力まで振るおうとするなど思わなかった。
笹山は無理をしてでも夏樹たちをこの学園に来させたかった理由が少しだけわかった気がした。
「笹山先生、こんなことになって申し訳ありませんが、このまま例の件を」
「例の生徒たちはこの中に誰もいません」
「――なんですって?」
「この子たちは……ただの思春期です」
「思春期で片付けないでください!」