作品タイトル不明
6「良いスタートじゃね?」①
由良夏樹は「霊能育成学校高等部第七校」の正門で土下座していた。
それはそれは美しい土下座だった。
「貴様は何が目的だぁあああああああああああああああ! 結界を破壊するとか、何を考えているんだぁあああああああああああああああ! 普通、壊すか!? なんのための結界だと思っている!? そもそもよく壊せたな! そこからもう疑問だよ! ついでに言っておくと、貴様が結界を壊したせいで術者が三人倒れたんだぞぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
「申し訳ありません、結界を決壊させてしまって!」
「面白くねええんだよぉおおおおおおおおおおおおおお!」
土下座をしていた夏樹は、体育教師と思われる男性教師に襟首を掴まれて持ち上げられた。
霊力を使っているので、さすが霊能力者を育成する学校だと感心した。
「月読! お前、なんでこんな破壊の化身みたいなガキを連れてきたんだ! 襲撃か!? つまらん一般学校でしか働けなかなった恨みか!?」
「誤解です、私は――」
「おい、てめぇ。俺たちの月読先生を呼び捨てにした挙句、なに舐めたこと言ってんだよ?」
男性教師の怒りが月読に向いたと同時に、夏樹も怒り始めてしまった。
襟首を掴んでいる腕を掴むと、力を入れた。
それだけのことで、ごきっ、と鈍い音が響く。
「ぁがああああああああああああああああああああっ!」
「あ、ごめんごめん。はい、ヒール!」
「ああああああああああああああああああって、あれ、痛くない? お前、なんだ、俺に何をしたぁあああああああああああああああああ!」
「うるさいなぁ、この人。俺が謝っているんだから、ちゃんと謝罪を受けろよ!」
「暴君かぁあああああああああああああああああ!」
こうなったのはもちろん、夏樹が原因だ。
謎の少年と邂逅したものの、気配もなにもなく消えてしまったことに怯えた夏樹が逃げようとするも、結界のせいで学校に向かえない。
ならば、学校の結界をどうするしかない。
そう結論づけて、結界を破壊してしまったのだ。
それについては申し訳なく思っているので、土下座していたが、無駄に上から怒鳴ってくる教師は好きになれなかった。
「――夏樹くん」
「はひっ」
静かだが、怒りを含んだ声に夏樹は身を強張らせた。
「まず、静かにしましょう。その後で反省もしましょう」
「は、はい」
「私のための怒ってくれるのは嬉しいですが、これ以上は流石に怒らなければならなります。いいですね?」
「向島第一中学校一の優等生由良夏樹、月読先生の言うこと聞きます!」
「はい、ありがとうございます」
月読は夏樹の肩を軽く叩き優しげに微笑んだ。
「……いや、このガキもガキだが、月読お前も大概だぞ」
男性教師が疲れた顔をしていた。
「ちょっと待ってください! どうして進藤先生が勝手に月読先生と生徒を出迎えているのですか!」
その時、校舎からひとりの男性教師が走ってきた。
「ちっ」
「進藤先生、あなたはCクラスの補習授業があるではありませんか!」
「面倒臭えな、笹山先生。生徒が勝手にやっているからいいんだよ。本来なら、俺はAクラスを受け持つはずだったのに、あの野郎どもが俺を差し置いて」
「そういう言動が目に余るから外されたのです!」
「――うるせえ! ったく、もういい。外から見学者が来るからどんなやつかと思ったら、月読の教え子のクソガキだ。いいところの坊ちゃんだったら利用してやろうと思ったのによう!」
「進藤先生!」
進藤と呼ばれた男性教師が去っていくと、代わりに笹山と呼ばれた男性教師が夏樹たちに駆け寄った。
「お出迎えできず、お出迎えできず申し訳ありません。まさか学校の結界が破壊されることになるとは思わず。いえ、もともと結界の貼り直しをゴールンウィークにする予定でした。もう限界だったのです。由良夏樹くんでしたね」
「はい。いろいろ、すみません」
「いえ、お気になさらず。我が校は、君たちを歓迎します」
「いい先生だ……あざっす! お世話になります!」
夏樹にとって、今回の学校見学は良いスタートを切った。