作品タイトル不明
7「良いスタートじゃね?」②
夏樹と月読たちは広い会議室へ通された。
車から叱られている夏樹を見ていた小梅たちも、みんな勢揃いだ。
「すまんかったのう、夏樹。助けてやりたかったんじゃが、さすがに月読が怒ってしまったんで余計なことをしてより怒られても仕方がないと思ったんじゃ」
隣に座った小梅が、そっと耳打ちしてくる。
「あー、俺が悪いからそれはいいんだけどさ。ねえ、小梅ちゃん」
「なんじゃ?」
「俺が結界をぶっ壊す前に、近くに神でも魔族でも、新たな神々でもなんでもいいんだけど、誰かいた?」
「…………なんも感じなかったのう。神や魔族じゃったら、俺様だけじゃなくて月読も気づくじゃろう。力が強い者なら、銀子たちじゃって気付くはずじゃ」
「そうだよねぇ」
「さっき言っとった、不思議な子供のことじゃろう?」
「うん」
「奇怪なこともあるもんじゃのう。じゃが、安心せい。夏樹が一番摩訶不思議じゃ!」
「嬉しくないんですけどっ」
小さな声でそんなやりとりをしていると、全員の冷たいお茶が配られた。
笹川先生と呼ばれた男性教師と月読がホワイトボードの前に立って打ち合わせをしている。
それぞれ、お茶をいただき一息ついて、スマホを触ったり、夏樹に目配せしたり、一部いちゃついたりして時間を過ごしていた。
五分くらい経ち、五月とは思えない暑さのため軽く入れてもらっている冷房で汗がひいたとき、月読と笹川が声をあげた。
「――お待たせしました。まず、こちらは笹山先生です。私の同期になります。ここ霊能育成学校高等部第七校で教鞭をとっています」
「ご紹介に預かりました、笹山、笹山文也です。本日は、ご足労どうもありがとうございました。お話はすでに、お聞きしていると思ってよろしいですか?」
笹山文也と紹介されたのは、三十代手前ほどの男性だった。
スラックスに半袖のシャツを身につけ、髪を清潔感ある短さに整えた生真面目そうな人だった。
彼の言う「話」とは「新たな神々」が学校に関わっている可能性があるということ、生徒だけではなく、教師も霊能力者であることに「驕っている」ということだ。
一同は肯定するように頷いた。
笹山は胸を撫で下ろした。
「できることなら学校見学に専念してもらいたかったのですが……このようなことになり申し訳、申し訳ありません。ですが、私は新たな神々の存在を知ってはいますが、会ったことも見たこともない。ましてや戦う力もないのです。どうか生徒のためにお力をお貸しください」
深々と頭を下げた笹山に、夏樹たちが力強く頷いた。
■
夏樹たちが会議室にいる頃、校舎の一角で生徒たち数名が集まっていた。
「ねえ、聞いた? さっきの結界を破壊したのって、今日見学にきている一般人なんだって」
「特別驚くことじゃないさ。僕たちだってやろうと思えばできる。常識があるからやらなだけだ」
「ほんとそれ。つーか、最近、一般人が増えて辟易してんのにさー、外部から生徒を招くつもりとかこの学校オワコンじゃん」
「なら、俺たちの力を見せてやればいいんだよ。格の違いって奴を見せつければ、家も血も大したことない雑魚は勘違いしていたことを恥じて逃げていくだろうさ!」
生徒たちは、「今日、学校見学を来た生徒」に格の違いを見せつけることを決めた。