作品タイトル不明
4「勇者が結界に阻まれるわけなくね?」①
少々ぐだぐだになりながらも、無事出発した夏樹たち。
月読の運転する車の助手席には夏樹が座り、後部座席には小梅、銀子、星子、菜々子が座っている。
一応、星子と菜々子に実体化を解いてほしいとお願いしたところ、夏樹が酷い目に会ったので人として車に乗車している。
背後を走る千手が運転する車には、助手席に虎童子が座り、後部座席には都、一登、円が座っている。
こっそり千手が「前方の車さ、乗っている人がやばすぎじゃねえか?」と呟き、全員が頷いていた。
夏樹と一緒に小梅たちがいるのは、戦力としてひとまとめにしただけだ。
仮に、新たな神々が本当に関わっていて、夏樹たちがくることを知っていれば襲撃される可能性がある。
ならば、まず夏樹が襲撃されるだろう。
車ごと攻撃された場合、神である月読、天使である小梅、星子と菜々子は夏樹の中に入ればいい。銀子も一般人のようでそうではないので、車が爆破されたくらいでは死なないだろう。そして、夏樹は襲撃くらいで殺せるのならとっくに死んでいるだろう。
反対に、千手たちは、襲撃されたら虎童子以外致命傷になる可能性がある。
十分抵抗できる戦力はあるのだが、夏樹たちに比べると不安は残る。
月読によって車に特殊な結界を張ってもらってあるので、最悪の事態は逃れられるだろう。
しばらく楽しく走っていた。
歌を歌い、お菓子を食べ、他愛無い話で盛り上がったりした。
月読も意外と普通に一緒になって楽しんでくれた。
向島市から出て、隣の街を走る。
大通りを走り、少し寂れた商店街に続いた。
田畑が広がり、民家がちらほら見えるようになると、山に向かう道路に乗った。
しばし山道を走る。
一度山を登ると、降り始めた。
五分ほど木々ばかりの同じ景色が続く。
すると、車が止まった。
後方の車も止まる。
「月読先生、どうしましたか? ――っ、襲撃ですか?」
「いいえ、違います」
「えっと、じゃあ、どうして?」
「申し訳ありませんが、夏樹くんはここで降りてくれませんか?」
「まさかの置き去り!?」
さすがの夏樹もショックを受けた顔をした。
まさか置き去りにされるとは夢にも思うまい。
「違います。ここから先、結界が張り巡らされているのです」
「……それで?」
「私は、夏樹くんが異世界で結界に阻まれた話を聞いています」
「そんなことありませんでしたよ、嫌だなぁ」
小梅たちは心当たりがあるのか、さっ、と窓の外を見て夏樹から視線を外した。
「結界を張っている方に、話をして夏樹くんを通してもらえるようにするので、しばしお待ちください。車の中で、万が一結界に阻まれてしまったら危険ですので、ご理解ください」
「……真面目に扱い悪くありませんか!? 泣くよ!?」