作品タイトル不明
58「悲劇は突然起きるんじゃね?」③
ステファニー・鈴木はイギリス人の父と日本人の母の間に生まれ、金髪の髪にスタイルのよい身体とあまり日本人の要素がない。
それはそれでいい。東京に遊びにいった時に、芸能界にスカウトされたこともあるし、学校でも人気だった。
問題は英語だ。生まれも育ちも日本なのに、見た目のせいで英語がペラペラだと思われる。特に、日本旅行中の外国人に助けてくれと英語で話しかけられたことは数え切れない。
便利なアプリがあるんだから使えよ、と思う。ステファニーは多用している。
そんなステファニーが異世界に魔剣の勇者として召喚されたのは一年前のことだった。
ファンタジーを嗜んでいたステファニーにとって、それからの出来事を予想するには容易かった。
しかし、まさか「やはり勇者が魔剣を使うというのも変な話じゃ。申し訳ないが、そなたを魔剣ごと追放させてもらおう」と宰相だが山椒だかわからない年寄りが言ってくるとは思わず、つい反射で殴り飛ばしてしまった。
人間側では生きていられないと思い、魔族の土地に逃げた。
モンスターに襲われながら、なんとか人里に辿り着き意識を失ったステファニーを助けてくれたのは、まだ幼い少年の魔族だった。
魔族に優しく村に受け入れられ、少年と村を守る日々を送っていると、魔王軍が現れ「この村に勇者がいると聞いた」とあれよれよと魔王のもとに連れて行かれた。
自分の事情を話し、魔族に恩があるから敵対しないことを約束し、人間と戦うことにした。
その過程で、人間嫌いな騎士団員、魔剣の本来の持ち主だった公爵家の当主、心穏やかな宰相、そして魔族を統べる魔王と「親しく」なった。
もちろん、命の恩人である少年魔族とも「とてもとても親しく」なった。
――やっぱり異世界はこうじゃなきゃ!
と、異世界生活を満喫していると、人間たちが「やりやがった」。
なんと本来ならば、一方通行の異世界と地球を繋いだのだ。
その理由は魔王軍にステファニーが加わってしまい、人間側は本気で焦った。
ステファニーを追放した国は他国から叱責され、後がなかったのだ。
その結果、ステファニーを「元の世界に戻す」方法を習得し、発動した。
愛しい魔族の男性たちが自分の名を必死に呼ぶのを聞きながら、ステファニーは地球に帰ってきてしまったのだ。
「――おのれ、人間め。ゆるさん」
ステファニーがダークサイドに落ちたのは言うまでもなかった。
そんなステファニーの魔力に気づいた柏原保に誘われ「帝国」に加わった。
――元の世界に戻るために。
■
全てを語り終わったステファニーに、銀子は拍手した。
銀子も同じ立場なら、ダークサイドに落ちていただろう。
「ちなみに、最初のショタ魔族さんは私もアリだと思うんですけど、他の魔族さんたちをこう、なんといいますか、男同士の熱いパトスのぶつかり合いがあったりとかしなかったすかねぇ?」
「するわけないでしょう。私のハーレムなのよ?」
「残念っすね、ショタだけは通じ得ましたが、そのあとはどうも分かり合えないようっす」
銀子が魔剣太郎を構える。
「残念ね。でも私はまた逆ハーを作って見せるわ」
ステファニーも魔剣を構えた。
「死にさらせぇええええええええええええええええ!」
「死ねやぁあああああああああああああああああああ!」
ふたりの魔剣使いが激突した。