作品タイトル不明
57「悲劇は突然起きるんじゃね?」②
「ありゃやー。硬いっすね、その剣ってあなたの力っすか?」
「もちろん。僕の能力、魔剣製造です。と言っても、あまり強い魔剣を作ることができないのですが……」
「私の魔剣花子を折ったんですから、その言い方だと嫌味にしか聞こえないっすねぇ」
どこか自慢気の保に、内心銀子は首を傾げた。
彼の力は「魔眼」だと聞いている。
また、彼の腕には「邪竜」が封じられているようだ。
長袖なのではっきり見えないが、なんとなく袖の下に包帯のような白い布が見える。
「魔眼の勇者さんだった気がするっすけど」
「もちろん、私は魔眼の勇者さ。しかし、自分の力を全て明かすほど愚かではないよ」
「まあ、そうっすよねぇ」
魔剣花子が折れたのは、保の剣技は関係ない。
単純に、生み出された魔剣が魔剣花子を上回っただけだ。
ただし、単純に剣としては、魔剣花子の方が上だった。しかし、込めた力の差が大きかった。
銀子は霊能力はあまりない。対して、保の魔力量は凄まじい。ならば、ふたりが己の魔剣に力を込めたら、どちらが上か想像に容易い。
「……ま、このままでも戦えるっすけど、一応は神奈家のお宝でしたからねぇ。それに、繋ぐこともできるでしょうし、大事に保護しておきましょうっす」
破片を拾い、ハンカチで包む。
折れた刀身はそのまま鞘に収めた。
「それじゃあ、――こんばんは、魔剣太郎っす!」
腰にあったもう一振り、夏樹が異世界から持ってきた業物の魔剣、その名を魔剣太郎を抜いた。
一見すると普通に剣だが、禍々しい魔力を纏っていた。
「……あれ? いつもよりも禍々しい気がするっすけど、ま、気のせいっすね!」
どくんどくん、と脈打つ刀身から、吐き気を催すような魔力が垂れ流しであったが、銀子はまったく気にならなかった。
「一応、言っておくっすけど、降伏する気はないっすか?」
「ないとも」
「そうっすか、残念っすね。んじゃ、――死ね」
銀子が再び地面を蹴ると、保――ではなく、控えていたステファニーが魔剣を握り銀子の前に立ち塞がった。
魔剣と魔剣がぶつかり、火花が散る。
「ひひひひひっ、今度はステファニーさんっすか!? あっちの柏原さんと違って、剣に覚えがあるみたいっすね」
「ええ、あるわ。この魔剣の使い手の勇者として、私は異世界に召喚されたの。でもね、よく考えたら勇者に魔剣ておかしいでしょうって話になって私は国を追われたわ」
「さすが異世界! 自分で呼んでおいてひどい!」
「そうよね! でもよかったわ。私は魔族に拾われ、命の恩人のために戦ったわ」
祐介ならば喜びそうなストーリーだと思う。
「だけどね、人間ども! 私が魔族の男の子たちで逆ハーを達成しようと、あと少しだと頑張っていた時に! 地球に帰しちゃったのよぉおおおおおおおおおお!」
「……泣けるっす」
銀子はぶわっと涙を流した。
ステファニーも滂沱の涙を流していた。
「……あの、ステファニー? その話はもう何度も聞いたから、戦いを」
「うるさい! 私の悲しみがわからないのなら黙っていなさい!」
「……はい」
声をかけた保は、ステファニーに怒声を浴びてしゅんとしてしまった。