作品タイトル不明
59「藪を突く前にやべえのが出てきちゃったんじゃね?」
魔剣と魔剣が激突した。
火花を散らしながら、嫌な金属音を立てていく。
「逆ハー女は死ねやぁああああああああああああああ!」
「腐った女はしねぇえええええええええええええええ!」
青山銀子とステファニー・鈴木が全力で相手を斬り殺そうとしている。
だが、魔剣は同格なのだろう。
どちらかが上回る雰囲気はない。
ならば、使い手で勝負が決まるはずだ。
「死ねやぁあああああああああああああああああ!」
「死ねぇええええええええええええええええええ!」
魔剣はそのままに、二人が左手を拳にして互いの顔に叩き込んだ。
「痛くねえっす!」
「え? 今なにかした?」
鼻血を出しながら、さも何もなかったと言わんばかりの態度だ。
ごっ、ご、っご、ごっ、と鈍い音が響き、血が舞う。
一分ほどの殴り合いで、銀子もステファニーも顔を腫らし、血だらけになっていた。
「この、美少女の顔を好き勝手に殴りやっがって殺してやるっす!」
「それはこっちのセリフよ!」
二人は魔剣を投げ捨て、掴み合った。
殴る、引っ掻く、髪を引っ張る、挙げ句の果てには噛みついている。
「……えぇ、魔剣使いが魔剣捨ててしまうんだ」
唐突に始まった殴り合いについていけない保が青い顔をしている。
保の中では、魔剣と魔剣のスマートな戦いを想像していたのかもしれない。
「さてどうするべきか」
戦いに割って入るのもひとつの選択肢としてあるが、あとで邪魔をしたとステファニーにネチネチ言われる可能性がある。
(いっそ両者とも殺してしまおうか)
保がそんなことを考えた時、圧倒的なプレッシャーに押しつぶされた。
片膝が地面に着く、だが、耐えられない。
両膝を地面に着き、次に、両腕までもが地面に着いた。
それでもプレッシャーは保を押しつぶさんと降ってくる。
呼吸が止まる。
口を開けても息ができない。
肉体が、呼吸を忘れてしまっている。
汗が流れ、地面を濡らす。
呼吸もできない、動くこともできない。
何が起きているのか全力で叫びたかった。
「――よう、いい夜だな」
男の声だった。
耳元で声が響いたのだが、顔を動かせない。
いつの間に近づかれたのかもわからない。
「おっと、悪い悪い。おじさんが近づいただけで、汗がびっしょりじゃないか」
とんとん、と背を叩かれたが、悍ましい何かに触れられた感覚がした。
少し触れられただけで、身体中に虫が這いずったのではないかと思えてしまう。
「特別力を入れたつもりはなかったんだが、ほら、限界まで力を抑えたから動けるだろう?」
男の声に、圧倒的なプレッシャーが消えていることに気づいた。
真夏の炎天下にずっといたような量の汗に不快感を覚える暇もなく、止まっていた呼吸が動き出す。
酸素を取り入れて少し冷静になった保はゆっくり顔を上げて、絶句した。
「――魔王、サタン」
「おいおい、サタンさん、だろ?」
――目の前に絶望がいた。