作品タイトル不明
49「分不相応な力って破滅の原因じゃね?」①
「――不快な戦いだった。誤った道を歩んだとしても新たな神々が関わっている以上、全てが彼の原因ではないだろう。ガープ、杏よ、この者を弔いたいが、勝手にするわけにもいかないだろう。この地の土地神……月読命殿に連絡した方がいいだろうか」
アマイモンは絶命した獅子山から背を向けた。
与えられた力であっても、卑怯なことはせず全力で立ち向かっていた少年を弔おう。
できることは少ないが、死者への敬意を払うべきだ。
「月読先生には私が連絡を――――」
「杏? どうした?」
スマホを取り出した杏が、硬直した。
口を大きく開けて、目を見開いている。
アマイモンとガープが杏の視線を辿り、彼女と同じように驚いた。
「――なぜ、立っている?」
「信じられねえ」
頭部を破壊された獅子山が、立ち上がっていた。
ちぎれた下半身がいつの間にか繋がっている。
「――死んで、いないのか?」
この戦いで、アマイモンに初めての動揺が訪れた。
いくら新たな神々に力を与えられていたとしても、人間が頭部を破壊されて生命活動を維持できるはずがない。
何かの反射で身体が動くのならわかるが、ちぎれた上半身と下半身が繋がっていることがそもそもおかしいのだ。
「――何が起きている? 少年、君はいったい何者だ?」
潰れた頭部が巻き戻るように再生していく。
その光景に、杏は口を押さえてしまう。
ガープは杏にグロテスクな光景を見せないように杏を背中に隠した。
口まで再生した獅子山の唇が、釣り上がった。
「俺を殺せる奴なんていないんだよ!」
「そうか」
アマイモンは地面を蹴った。
凄まじい再生能力を持っていると判断した。ならば、再生能力を上回るダメージを与えればいい。
アマイモンの拳が腹、鳩尾、胸に穴を開けた。
しかし、じわじわと再生していく。
さらに力を込めて、蹴りを入れた。
獅子山の足が折れ、倒れそうになるも、すぐに再生して踏ん張り倒れない。
「なるほど。想定外の再生速度だ」
感心したアマイモンは獅子山に向けて手をかざした。
「ならばこれはどうだろうか?」
魔力を収束させた高密度の魔力の砲撃だ。
いくらアマイモンの力が下がったとはいえ、人間ひとりの上半身を消し飛ばすくらいの力を込めることはできる。
――しかし、獅子山の肉体に傷はなかった。
「無傷か……違う、私の攻撃は君の上半身を消し飛ばしたが、瞬く間に再生したのだろう」
「ははははっ、すごいな、あんた! 正解だ!」
頭がすべて再生された獅子山が笑った。
「初めて再生って味わったけど、痛いな! 頭を潰された時は痛すぎて逆に何も感じなかった。足を折られた方が地味に痛いんだよ!」
「君は再生経験がないのか」
「ないに決まっているだろ! 俺は、力を得て目を覚ましてから一度も傷つけられていないんだ! それを、死ぬほど殴る蹴るしやがって!」
怒りに染まっている獅子山に、アマイモンが不思議そうに尋ねた。
「そういえば、君が新たな神々から与えられた力を聞いていなかったな。一瞬、凄まじい再生能力かと思ったが、違うようだ。よかったら教えてくれないだろうか?」
尋ねられた獅子山は、にやりと笑った。
「俺の力は――不死だ! 俺を絶対に殺せない! 俺は絶対に死ななない! 俺の明日香への想いのように、明日香の俺への想いのように、消えることがないんだよ!」