作品タイトル不明
50「ガープさんだって強いんじゃね?」①
「えっと、えっと、明日香って別に獅子山くんのこと好きじゃなかったのに、どうしてそんなに堂々としていられるんだろう? 教えて、ガープさん?」
「知らねえよ! あ、あれだろ? 勘違いしている痛々しい子って感じだよ。ほら、たまにいるじゃねえか。ちょっと話をしただけで、あれ、この子俺のこと好きじゃねって思うやつ」
「あー。じゃあ、獅子山くんは勘違いさんなんだ。……やっぱりちょっと前の杏を見ているようで凹んじゃう」
「元気出せよ、杏! お前は立ち直った! もう勘違いちゃんじゃない! 胸を張っていいんだ!」
「ありがとう、ガープさん! 杏、頑張る!」
「その意気だぜ!」
杏とガープががっちり握手をした。
そんな光景をじぃっと見ていた獅子山が拳を握りしめた。
「お前たち……俺の明日香への想いを勘違いっていうのか!」
「逆逆! 明日香の獅子山くんへの想いが勘違いっていうか」
「杏、言ってやれ! キモいんだよ、勘違い野郎って!」
「言えないよ!? さすがに心の中では思っていても、直接は言えないよ!」
「お前らぁああああああああああああ! 言っているじゃねえかぁあああああああああああああ!」
激昂した獅子山が杏めがけて走ってくる。
「アマイモン様の手をこれ以上煩わせずに死ね」
ガープが前に出て、獅子山の拳を受け止め握力で潰した。
「ぎぃあっ」
「手を握り潰されるのは初めてか? 不死を名乗るなら、どうせ死なないんだから問題ないって笑ってみろよ!」
長身のガープの長い足から繰り出された蹴りが、獅子山の脇腹をえぐる。
よほど衝撃があったのだろう。
白目を剥き、失神しそうだ。そんな獅子山の意識を飛ばさないように、ガープは鳩尾を殴る。
アマイモンのように魔力なしで肉体を貫通することはできないが、そこまで強い攻撃する必要を感じない。
――仮に、肉体が不死であっても、精神はどうだろうか?
「お前もついてねえな! 相手は天使なら優しく戦ってもらえたのに、わざわざ魔族と繋がっている杏の前に出てきやがった!」
「だったら、なんだ!」
失神できなかった獅子山が拳を振るうが、ガープには届かない。
スウェーバックで拳を避けると、お返しとばかりに顔に数発拳を叩き込む。
「へなちょこパンチが俺に当たるわけないだろう!」
続いて腹に拳を五回叩き込んだ。
魔力なしであっても基本スペックが高いガープの拳を何度も受け、獅子山はその場に膝をつき胃液を吐き出した。
しかし、ガープにはちょうどいい場所に頭があるくらいにしか思わなかった。
魔力を使わずに、しかし、全力の右フックが獅子山の側頭部を捕らえた。
獅子山は地面に激突する。
頭を押さえて、咳き込みながら、目には涙を溜めている。
「おいおい、調子いいのは杏にだけか? 俺にも調子よく、唾飛ばしながらなんか言ってみろよ?」
ガープは不死など信じていない。
そんなものいないと理解している。
もし不死が存在するのなら、敬愛するアマイモンがたどり着いているはずだ。
しかし、アマイモンは不死ではない。
ならば、不死など存在しないのだ。
「もしもお前が不死を名乗るのなら、まあ、なんだ。心を殺してやるよ。ほら、立て。通信教育のボクシングを三ヶ月受講したガープさんが、殺してくださいと懇願するまでぶん殴ってやる!」