作品タイトル不明
間話「マモン不在の青森じゃね?」②
――青森某所。
「ただいま帰りまもんまもん! いやー、思いの外、向島市から帰ってくるのに時間がかかってしまいまもんまもん! まさか浅草でまもんまもんな結界が張ってあり、亜子さんと閉じ込められてしまもんまもんとは、このマモンとしても思いまもんまもんでした!」
両手にお土産をたくさん持って帰ってきた七つの大罪にして、強欲を司る魔族マモンは慣れ親しんだ我が家の玄関を開け、家主にして主君であり幼馴染みの大魔族サマエルに声をかけながら家の中に入った。
「――――――まもん?」
最初に違和感があった。
なんだろうか。
久しぶりに帰ってきた家の雰囲気が違う気がした。
「――――――まも、ん?」
改めて家の中で一歩を踏み出した。
気づいたのは、匂いだった。
家の中の匂いが違う。
「――――――ま、も、ん?」
次に気づいたのは、台所だ。
菜箸やお玉をはじめ、マモンが手に取りやすい位置に置いてある調理器具たちがそれぞれ違う場所にあった。
まな板もマモンは使ったあとは洗ってきちんと水気を切るのだが、今は立てかけてあるだけで濡れたままだ。
何よりも、――見たことのない茶碗があった。
「まももぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!?」
「うおぅっ、なんだ、マモン! 何、涙流しながら叫んでるんだよ!? ついに壊れたか?」
「まもんまもん――さまたん様」
「な、なんだ?」
「寝取られまもんまもん」
「亜子ちゃんを!?」
「さまたんをでまもんまもん!」
「寝取られてねーよ! その言い方だと私とお前になんかあるみたいじゃねーか! 紀元前から一緒にいるけどなんもねーよ!」
ごっ、とさまたんがマモンの頭に拳を落とした。
「つーか、お前な! 由良夏樹のところに行くとか言いながら亜子ちゃんと浅草観光してんじゃねえよ!」
「――まも」
「せめて隠せよ! SNSで匂わせてんじゃねえよ! 張り倒すぞ!?」
「べ、別に匂わせなまもんまもんなどしていないでまもんまもん」
「声、震えているぞ」
さまたんの後ろから、愛ちゃんが顔を出す。
すっかり農家の日常に慣れた様子で、青森で生活をする前に比べると健康的に見える。
「あ、マモン。帰ってきたんだ。いやー、マモンがいなくても意外となんとかなるもんだなーって。ご飯は心配だったけど、その気になれば私もさまたんもできたんだよね。思えば、私たち一人暮らしが長いから!」
「悲しいこと言わないでほしいでまもんまもん」
「悲しくねえよ! 自立しているってことだよ!」
「ま、まもん」
マモンは少しだけほっとした。
家の中の雰囲気は変わっているが、さまたんも愛ちゃんもいつも通りだ。
よかった、とマモンが安堵した時だった。
「――お疲れ様でした、サマエル様、愛様、今日はいただいた猪肉を使って焼肉をやりましょう。おっと、やりましょうであもんあもん」
安物のジャージを綺麗に着こなした長身の青年、魔族アモンがあいかわらず語尾が慣れずに恥ずかしそうにしている。
そんなアモンに、さまたんと愛ちゃんがフォローを入れる。
「だーかーらー、無理して語尾つけなくたっていいんだって! 別に義務じゃないからね!?」
「あもんあもんって響きはかなり良いと思うし、視聴者さんもあもんあもんって喜んでくれているけど、さまたんが言うように無理してやるものじゃないって」
「そう言ってくださるのは嬉しいのですが、マモン殿不在の今、このアモンが精一杯頑張らせていただきます! ――あもんあもん!」
ははは、と三人が笑う。
そんな光景を見せられたマモンは、
「―――――――――ま?」
それ以上、何も言えなかった。