作品タイトル不明
48「お久しぶりのアマイモン様の戦いじゃね?」③
「―――俺は明日香の特別だった。明日香も俺を特別だと言ってくれた。俺のことを一番愛していると言ってくれたんだ。だから、俺は明日香の仇を取る。取らなければならない」
上半身だけになった獅子山は、それでも死ななかった。
死なないどころか、血走った瞳をアマイモンに向けて、己の感情を吐き出し続ける。
「……て、テケテケさんになっちゃった」
「こら、しっ。そういうこと言わないの」
腕だけで這いずってくる獅子山を見た、素直な杏の感想をガープが嗜めた。
「明日香は俺が一番だと言った。俺も明日香を一番だと告げた。わかるか? 俺たちは愛し合っているんだ。心から愛し合っているんだ。愛を知らないお前たちにはわからないだろう? 俺の想いは、死さえ凌駕する!」
「見事だ。私は君のことを見誤っていた。心から謝罪する。その想いは本物だ。君の想いは純粋だ」
アマイモンが獅子山に賛辞を送る。
だが、アマイモンは獅子山を殺すと決めている。
彼の想いと、彼がしたことは関係ないのだ。
魔族であるアマイモンには、獅子山が数人の人間を殺していることがわかっている。
不必要に血を浴びたのだろう。死の匂いだけではなく、濃い血の匂いがする。
おそらく、簡単に殺さず、拷問まがいのことをしたはずだ。
彼を野放しにすれば、同じことを犯すだろう。
獅子山の明日香への想いが純粋で本物であったとしても、人を殺していい理由にはならない。
「そうだ、俺の想いは本物だ。明日香の汚れない心が俺を愛してくれている。死んだ今も、その想いは伝わってくるんだ。明日香が望んでいる、仇をとってくれと! そして、俺は幸せの神と約束した! お前たちを殺し、その死体を捧げれば、明日香を甦らせてくれると!」
涙を流しながら狂ったように叫び続ける獅子山の言葉に、聞き逃せないものがあった。
「――やはり新たな神々が関わっているのだな。しかも、幸せの神か。凄まじい力を持っているが、異世界で死んだ死者を蘇らせることは不可能だ。ゴッドであってもいくつかの条件が重ならない限り無理なことを、幸せの神ができるはずがない」
「うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ! 俺は、明日香を取り戻す! 明日香が戻ってきたら、僕だけの明日香にするんだ! ふたりで幸せになって、家族を作って!」
這いずってくる獅子山には狂気が宿っていた。
杏は彼の尋常ではない姿に、もう何も言えず、ただ口を開けているだけしかできない。
ガープはそんな杏を背に庇っている。
「――獅子山よ。君の気持ちは十分に理解した。許せないこともあるが、同情もしている。なによりも、そのような姿にしてしまったことを申し訳ないと思っている。すぐにとどめをさそう」
アマイモンの動きは獅子山が次の言葉を吐き出すよりも早かった。
獅子山の真正面に立つと、大きく足を振り上げる。
「――ま」
そして、容赦無く獅子山の頭を踏みつけた。
アマイモンの震脚によって、獅子山の頭部が破裂した。