作品タイトル不明
62「決着じゃね?」①
小林蓮は、力なく地面に倒れ、腕と足から血を流していく。
「でも、まだだ! 負けられない! マモンさんを君とは戦わせない!」
蓮は、無事な腕で地面を殴りつけると、その反動で飛び起きる。そして、そのまま夏樹に倒れ込むように拳を放った。
「――その気合い、最高だよ!」
夏樹は蓮を受け入れた。
アルフォンスを殺そうとしたことは腹が立つし、小梅を利用しようと企むマモンに与している蓮を、マモンよりも厄介な敵として認識し直した。
ならばすることはひとつだけ。
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
夏樹の行動を読んだマモンが叫んだが、止まる気はない。
夏樹は魔剣を振り、迫り来る蓮の腕を斬り落とした。そして、そのまま彼を袈裟斬りにした。
「……ごめんね、まもん、さん」
血溜まりを作り、仰向けに倒れる蓮。
再び倒れた蓮は、魔剣の一撃を食らいながら肉体が両断されておらず、絶命もしていない。これは夏樹が手を抜いたのではなく、蓮が規格外の霊力で本能的に防御したからだ。
だが、しばらくすれば息絶えるだろう。
「今、楽にしてやる」
夏樹は敵として認識し、戦った相手を見逃さない。
特に蓮のように強く、出せる限りの力を出さなければ勝てなかった相手には敬意を払う。ゆえに、殺さない選択肢はない。
だが、マモンがそれを許さないだろう。今までとは違い、敵意を込めた目で彼は夏樹を見ている。次の瞬間、瞬きの間に夏樹の眼前に移動し、虚空から赤黒い長剣を抜くと夏樹に向かって振り下ろす。
夏樹も常闇の剣で迎え撃った。
魔剣と長剣がぶつかり、暴風が吹き荒れる。
夏樹に両断され、崩壊しかけている世界が、より悲鳴を上げて崩れていく。
「俺は強欲な魔族だが、甘ったるい魔族でもある。蓮と過ごした短い時間で、俺は蓮のことを息子のように思っていた! 息子を斬られて平然としていられるほど、俺はできた魔族ではない!」
「あんたも、実はいい奴なのかもしれないな。それを知ることができなくて、残念だ」
「抜かせっ! はぁ!」
マモンが魔力を込めると、彼が口から魔力の閃光を放った。
全力で剣を押し、夏樹を斬ろうとするマモンの力が強く、下手に避ける動作をすると力任せに斬られる可能性があったため、魔力を身体に回して、甘んじて閃光を受ける。
「ぐ、あ! くそっ!」
僅かに身体をずらすことができたが、魔剣を握る右腕と、右上半身が焼かれた。それでも表面上のもので、重傷には至らない。
「忌々しいほど貴様は強い! 認めよう! 由良夏樹、貴様は強い!」
「ありがとう、強欲を司る魔族にそう言ってもらえると嬉しいよ!」
夏樹は左腕を剣の柄から離す。
「――あんたは強いし、おっかないから、このまま全力で押し通す!」
「やれるものならやってみろ!」
「やれるさ。今の俺は、聖剣を使えるんだぜ」
にやり、と笑った夏樹の左腕に、雷が宿った。
「な」
絶句するマモンの身体を、掬い上げるように下から上に、剣の形をした雷の塊を振るった。
「聖剣――神鳴りの剣」
刹那、マモンの肉体は真っ二つに両断された。