作品タイトル不明
29「お礼の時間じゃね?」①
「代表して名乗らせていただきます。私は新たな神々の正門の神と申します」
「……おま、ふざけんな! 正門の神がいるなら、裏門の神も校門の神もいるのか!?」
「はい。彼が、裏門の神です。彼女が校門の神です」
「いるの!?」
黒髪を七三分けにして、眼鏡をかけたスーツ姿の男が丁寧に夏樹たちに挨拶をした。
正門の神と名乗った男性は、三十代半ばほどだろう。
彼が連れてきた中に、裏門の神と校門の神もいた。
「――っ、天才的な俺様はわかってしまったんじゃ! おどれが、門の神の一派じゃろう!」
「――That's right! さすが魔王サタンの御息女小梅・ルシファー様、ただの美少女ではありませんね」
「まあのう!」
ドヤ顔をする小梅に、夏樹たちが何ともいえない顔をした。
残念ながら、ちょっと言動に問題がある夏樹でさえ、正門、裏門、校門とくれば門の神の関係者であることくらいわかる。
わかるのだが、小梅の笑顔を守るために気づかなかったふりをした。
「――なんだってぇえええええええええええええええ! お前たち、門の神の手下か! ――っ、まさか、門の神を俺に殺された復讐をしにきたっていうのかい!?」
花子が「夏樹、あんたいい子ね」と涙を流した。
「誤解です、由良夏樹様。先ほど言ったように、門の神から我々を解放してくださり心から感謝しています」
「……え? マジで?」
「はい、マジです。門の神が死んだ瞬間、我々はしばし小躍りをしてしまいました。あのカス、いえ、クズ、ではなく、クソ野郎……汚いことを申し訳ありません。私、嫌いな人間を嘘でも良く言えないのです」
「無理しなくていいから! 門の神がカスでクズでクソ野郎で雑魚だったのは俺たちも知っているからさ!」
「ありがとうございます。門の神を殺してくださり、改めてどうもありがとうございました。――よかったら、焼肉奢りますよ? 行きませんか?」
「行きたいけど、ついさっきごはん食べたばかりなんだ」
「では、後日にて」
「うん」
「いやいやいやいやいや、由良ぁ! なに約束取り付けているんだよ! 罠かもしれねえだろ!」
話を進めていく夏樹に、常識がある千手が待ったをかけた。
「千手さん、見てご覧よ。正門の神さんの瞳を……俺、こんな澄んだ瞳は祐介くん以外久しぶりに見たよ」
「――っ、なんて澄んでいやがる。俺にはわかる。こいつは、マジで上司に報われなくてしんどい思いをしてきたが、そのクソ上司が消えて大喜びしている奴の目だ。悪かった、あんたに嘘は微塵もねえ」
「わかってくださいますか」
なにやら正門の神の瞳は千手に訴えるものがあったようだ。
がっしり握手を交わした。
「さあさあ、道端では腹を割って話をしにくいだろう。ちょうど近くに私のマンションがあるから、場所を移すとしよう」
康弘がそう言ってくれたので、一同は移動を決めた。
さすがに道端で神々がどうこう話ができないのだ。
「待ちやがれ、クソ親父! なに自分の家みたいに言ってやがる! 近所にあるのは俺のマンションじゃねえか! おい、お邪魔しますじゃねえよ! 行くな!」
「甘いな千ちゃん」
「何がだよ!」
「私は少しずつ千ちゃんのお家に私物を運んで」
「何しやがってくれているんだ、クソ親父ぃいいいいいいいいいいいいいい!」
千手の叫びは聞こえないことにして、夏樹たちはマンションに移動した。