作品タイトル不明
30「お礼の時間じゃね?」②
夏樹たちは千手のマンションにいた。
門の神の配下だった神々は、正門の神、裏門の神、校門の神が代表として部屋に上がっている。
「改めて、門の神を殺してくださりどうもありがとうございました」
「どうもありがとうございました!」
「どうもっ、ありがとうっ、ございまっ!」
「……ひとり主張が強い奴がいるなぁ」
普通にお礼を言ったのは裏門の神である青年。
三十手前くらいで、スラックスとシャツを身につけた爽やかな雰囲気を持っている。
無駄に力を入れてお礼を言ったのは校門の神である女性だ。
二十代半ばほどだろう。スカートタイプのスーツに身に包み、黒髪をセミロングにしている。
「ほら、コーヒーだ。とっても苦くしてやるからちゃっちゃと飲んで帰りやがれ」
「これはこれはありがとうございます」
「苦いの好きです」
「酸っぱいのが好きです」
「お前らの好みなんてしらねえよ!」
一応、客扱いしてくれてはいるが、大人数で家に来られて千手は不機嫌だ。
千手の背中でぐったりしていた虎童子は、七森康弘が作ったパラパラのチャーハンを一心不乱にかきこんでいる。
「えっと、正門の神さんたちを含めてみんな結構強いよね? 門の神にひとりじゃ勝てなくても、全員で袋叩きにしちゃえばいいのに。あいつ敵が多かったでしょう? あいつを嫌いな奴を総動員すれば余裕でぶっ殺せたんじゃない?」
「可能ではあったでしょう」
夏樹の疑問に答えたのは、正門の神だった。
「正直な話、門の神を殺すために集まってくれる神々はざっと百を超えるでしょう」
「嫌われすぎぃ!」
「しかし、彼には世界を移動する能力があります。先代門の神に至ってはとても臆病で常に仮初の身体で行動していました」
「あー、そうだった」
「あなたのように、門の神の本体まで届く攻撃もできず、何よりも……人質を取られていました」
「やっぱりそうだよねぇ」
「はい。私たちは人々を、家族を見守る神です。私たちは、従わなければ人を無作為に殺すと言われていました」
「清々しいほどのクズぅ」
先代も先ほど殺した門の神も、お手本のようなクズだった。
もともと殺しても心が痛まない相手だったが、今は、いいことをしたとドヤ顔をしたくなる。
「我々は、あなたたちの情報を調べるように命じられ、最悪の場合人質に取るように命じられていましたが」
「――っ」
「まず、由良夏樹様のご自宅には魔王サタンがいるので無理です」
「でしょうね!」
「他のご自宅も、魔王サタンの探知範囲にいるので無理です」
「えっと、どんまい」
「いえ、もともとする気はありませんでしたので問題ないんです。むしろいい理由ができて良かったと思っています。あ、ですが」
「どうしたの?」
「調査の途中で、由良夏樹様が美脚、競泳水着、黒ギャル、鼠蹊部がご趣味であることは近所の井戸端会議でお聞きしました」
「はははははっ、甘いな! 俺の趣味嗜好はすでにみんなにバレているぜって、なんでご近所に俺の趣味嗜好がバレちゃってんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
叫んだ夏樹は、「もうお外を歩けない」とシクシク泣きはじめた。