作品タイトル不明
7「泥臭く戦うんじゃね?」①
夏樹の拳が死の神の頬骨を砕いた。
同じく、死の神の拳が夏樹の左肩を砕いた。
「――づっ……痛――くないっ!」
左肩に激痛が走ったが、痩せ我慢して蹴りを繰り出す。
死の神の鳩尾に爪先が刺さり、くの字に身体が曲がる。
だが、足を死の神に掴まれて、そのまま骨を折られた。
「――ぎぃっ」
なんの躊躇いもなく骨を折った死の神の顔は再生されていた。
力が強いだけあって、再生も早いらしい。
口から血を流しながら、血のような赤く染めた瞳を向けてくる死の神の顔面を、夏樹は折られた足を軸にして蹴りを入れた。
「痛ってぇえええええええええええええええええええ!」
首を蹴られた死の神の身体が大きく傾き、夏樹の足を離す。
吹っ飛ばずに、衝撃に耐えた死の神は単純な暴力にも強いのだと理解した。
夏樹は受け身を取れずに地面に背中から着地してしまった。
足と肩がずきんずきんと痛む。
焼けるような鋭い痛みが暴れた。
こんな簡単に骨を折られたのは久しぶりだ。
いい眠気覚ましになってくれた。
夏樹は回復魔法を全力でかけて、折れた骨を繋ぐとアイテムボックスから適当な剣を取り出し死の神の首に目掛けて思い切り薙いだ。
「――死ね」
しかし、剣は死の神の首を跳ねる前に朽ち果てた。
「うぉぅ!?」
力の行き場がなくなってしまった夏樹がつんのめってしまうが、そのまま死の神の腹に向かってタックルした。
そのまま地面に倒し、馬乗りになる。
「お前が死ねや!」
「貴様が死ね!」
夏樹が拳を振り下ろす。
鈍い音が何度も響いた。
しかし、死の神も負けていない。
夏樹を力任せに転がすと、今度は死の神が馬乗りになり拳を振り下ろした。
再び、鈍い音が響く。
夏樹は腕を掲げて防御の体制を取るが、死の神は気にせず拳を振り下ろし続ける。
拳は防御した腕をへし折った。さらに、防御の隙から夏樹の顔を、無防備な腹を殴り続ける。
鈍い音に、水音が混ざった。
夏樹の鼻が折れ、唇が裂け、額が破れて血を流していた。
(……やべ)
ダメージが蓄積する。
夏樹は人間だ。
勇者であろうと、規格外の力を持つと言われようが人間なのだ。
神ほど頑丈ではないし、ちょっとしたことで死んでしまう。
相手が神であるのなら、なおさらだ。
神を相手になぜ泥試合をしているのかと思う。
同時に笑えた。
どうしていつもこんな痛い思いばかりしているのか、少し泣きたくなった。
「どうした由良夏樹? この程度か? ならばこのまま殴殺してやろう」
「…………ふざけんな、この程度で、殺されてたまるか!」
夏樹は死の神の腕を掴んだ。
折られた腕が痛むが、今は後回しだ。
両腕を掴まれた死の神が、夏樹の手を解こうと抵抗するがさせない。
「つーかーまーえーたー!」
にんまり笑った夏樹は、そのまま腕に力を込めると死の神を引き寄せる。
「――な」
まさか力で負けるとは思わなかったのだろう。
死の神から驚きの声が漏れた。
夏樹は笑いながら、体勢を崩して近づいてくる死の神の額に全力で頭突きをした。