作品タイトル不明
5「自分を過信している姿って悲しくね?」②
柏原保は大きく嘆息した。
「どうやらあなたたちは私のことを過小評価しているようですね。由良夏樹に関しても、同じ異世界で力を得た少年です。我々に大きな差はないのですよ」
保が腕に巻かれた包帯を静かに解いていく。
「お、おい、いいのか? 邪竜の力が世界を破壊しちゃうんだろう!?」
保の「設定」を信じていないが、こうも堂々と包帯を解かれてしまうと素盞嗚尊も動揺してしまう。
これで腕に何も「しるし」がなかったら居た堪れない。
だが、堂々と包帯を取る保を見ていると、腕に何か邪竜の「しるし」があるのだと思いたい。
むしろ、あってくれと素盞嗚尊は祈った。
「私の呪われた腕を見せることには抵抗がありますが……私の力を神に示しましょう」
「いや、だから、世界の危機になるんじゃないの!?」
「私も勇者です。当時はさておき、今の私なら邪竜の力を抑えることは問題ありません」
「あー、よかった! すさすさほっとした!」
「やさしい神ですね、素盞嗚尊様。敵対しなければならないことが残念です」
「お、おう。ありがとう」
どうも話が噛み合ってないようで、成立しているのが気持ちが悪い。
ときどき、保に声が届いているのか不安にある。
「さて――我が身に宿る邪竜の力をお見せしましょう」
ついに保の腕に巻かれた包帯が全て解かれた。
日に焼けていない細くも引き締まった腕には「邪竜」と書かれていた。
「んんんんんん?」
「……お、おや?」
素盞嗚尊が唸り、月読命が動揺した。
それもそのはず、保の腕には漢字で「邪竜」と二文字刻まれていたのだ。
――さすがに想定外だった。
「設定」として、邪竜の「しるし」があるか、包帯そのものが封印であるというくらいは素盞嗚尊も月読命も考えていたが、漢字で「邪竜」と書かれているとは夢にも思っていなかった。
せめて腕に何もなく、やっぱり「設定」なんじゃないのと疑問を抱く自分たちに、あくまでも力が宿っているのだと言葉強く言ってもらった方がマシだ。
「あのー、それどうしたの?」
恐る恐る、素盞嗚尊が尋ねる。
「――気づいてしまいましたか」
「うん、気づいちゃった」
「笑ってください。この醜い腕を。これが邪竜を封印した代償です」
「……それ、本当? すさすさには外国人がこの漢字かっこいいってノリでタトゥーを掘っちゃって後で漢字の意味を知って後悔する系に見えるんだけど。いや、邪竜ならいいんだろうけどさ!」
「しかし、邪竜の力を制御した今の私ならば――異世界から、竜を召喚することができます」
「お話し聞いて? 言葉のキャッチボールしよう!?」
「いでよ、数多の命を奪いながら満足できぬ邪悪な竜よ。お前に神の肉を当てよう。――ヒィドラ」
保が腕を高く上げると、魔法陣が生まれた。
その魔法陣から、九つの首を持つ竜が現れたのだった。
「――天叢雲剣っ!」
しかし、神剣の一振りでヒュドラの九つの首はすべて両断され、異世界の竜は咆哮ひとつ上げることなく絶命した。
「せっかく邪竜の力を持っているのなら、つまんねえことせずに直接かかってこいやぁ!」