軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59「規格外な奴じゃね?」①

夏樹は小梅を庇うように一歩前に出て、片腕を広げた。

「悪いけど、そんな酷いことをされるとわかっていて小梅ちゃんは渡せない」

「…………酷いことか、そっか……まもんまもん」

「大丈夫だよ、マモンさん! 俺たちはみんなまもんまもん大好きだから! まもんまもん!」

「まもんまもん」を酷いこと扱いされてしまったマモンは、ショックだったのか、その場に崩れ落ちそうになるが、隣の青年が支えて励ますと、なんとか踏ん張ることができたようだ。

「……ふっ。俺は強欲な魔族であるが、繊細な魔族でもある。人間よ、言葉には気をつけてもらおうか」

「あんたは何か言うたびに、俺は強欲な魔族であるがって……主張しなきゃ喋れんのか! あー、もう面倒臭いな! いいか、よく聞け、このまもんやろう! 小梅ちゃんは俺の大事な家族だ。指一本でも触れてみろっ、ぶっ殺してやる!」

少々顔を真っ赤にした夏樹が、マモンに指をびしっと向けて小梅を守ると宣言する。

「夏樹くん、やるぅ! 痺れるぅ! クソ兄貴とは全然違うっ!」

「……ちっ。後れをとってしまったっすね。でも私にはわかります。私に恨みを持つ誰かが今度襲いかかってくるのを夏樹くんが助けてくれるんすよね?」

一登が口笛を鳴らし、銀子が悔しがっている。

そして小梅はというと、

「――とぅくん」

ときめいていた。

「まもんまもん。いいだろう。お前が小梅を守ると言うのなら、俺は力ずくで奪っていくのみだ。俺は強欲な魔族であると同時に、強引な男子でもあるのだからな!」

「御託はいいからさっさとかかってこい!」

夏樹が手招きするが、マモンは不敵に笑うだけで観客席から降りてこようとはしなかった。

「舐めるなよ、人間! 俺は強欲な魔族であり、力強い魔族でもあるが、人間と戦う趣味はない。なによりも、お前では私に勝てはしない。ならば、――蓮。仕事の時間だ。まもんまもん」

「待ってました。僕の出番ですね、まもんまもん」

黒づくめの青年が、観客席からジャンプして軽やかに着地した。

「――うげ」

夏樹は嫌な声を出す。

青年は、霊力を使わず、自分の肉体のみで二十メートルほどの距離をジャンプしたのだ。

肉体の基礎が、まず夏樹と違う。

「まもんまもん。人間の少年よ。お前が強いことはわかっている。だが、蓮に勝てるかな?」

「まあ、死なないうちに降参してくれれば殺しはしないよ。まもんまもん」

「……その前に……そのまもんまもんって流行ってるの?」

背後から「今それ聞くの!?」と一登の叫びが聞こえてきたが、マモンだけならいざしらず、青年までもが使っているのならもしかして、と夏樹は思ってしまった。

「ほう。興味があるか?」

「あるとも。俺は勇者様だが、好奇心旺盛な思春期ボーイでもあるんでね!」

「いいだろう! まもんまもんは、魔界で大流行している素晴らしい語尾だ! まもんまもん!」

「なんだってー! まもんまもん!」

「嘘つけぼけぇ! だーれが、そんなみっともない語尾をつけるかぁ! 魔界でも、神界でも、人間界でも全然流行っとらんわ! あと、収拾がつかなくなるじゃろう、夏樹もくっだらない語尾を使うな!」

「ごめんなさい」

ツッコミに疲れて息を切らせる小梅に謝罪して、夏樹は青年に向かって歩いて近づいていく。

手を伸ばせばお互いに触れ合える距離で、足を止めると、青年の顔をまじまじと見た。

青年は、二十歳ほどだが、もう少し若く見える気がした。髪を伸ばしていると思われたが、意図して伸ばしているのではなく、無造作にのびっぱなしという感じだ。洋服も、ほつれを修繕した後があった。

「えっと、君が由良夏樹君でいいよね?」

「ああ、俺が由良夏樹だ。あんたは?」

「僕は、小林蓮。よろしくはしなくていいよ」

「あ、そ」

「……君の周りは賑やかだね。人間、霊能力者、天使が仲良く暮らしているなんて――考えただけでもイライラするよ」

青年――小林蓮は浮かべていた笑顔を消すと、霊力で肉体を強化した蹴りを夏樹の腹部に入れた。

だが、

「痛くなーい!」

すでに魔力を使い身体強化した夏樹にはノーダメージだった。

「いいさ。どうやら君は僕が全力で戦っても平気のようだから、手加減はしないよ」

「こっちだって小梅ちゃんの語尾がかかっているんだから、全力でぶっ飛ばしてやるよ」

異世界帰りの勇者と、天使さえ倒せる人間の戦いが幕を開けた。