軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58「仕掛けられたんじゃね?」②

夏樹は、マモンにはもちろんだが、彼の隣にいる青年にも大いに警戒していた。

マモンと一緒にいることからして、青年がアルフォンスを襲った人間だと推測できる。

なによりも、離れている夏樹にもはっきり伝わる霊力の強さは、人を超えた規格外だとわかった。

「んで、そのマモンさんが俺たちになんの用かな?」

「まもんまもん。そう慌てるな、と言いたいが、俺は強欲な魔族だが、話のわかる魔族でもある。お前の質問に答えてやろう。……と、言ってもすでにサタンと接触したようなので、俺のすることは知っているだろう?」

「もちろんだ。あれだ、あれあれ、あれだろ?」

「……貴様、まさか俺がサタンを倒して、魔王の座から引き摺り下ろすことを企んでいると知らないわけじゃないだろうな?」

「馬鹿なこと言うな! 俺は、お前がサタンさんを魔王の座から引き摺り下ろすことを企んでいることを知っているぞ!」

「ならばいい。まもんまもん」

「わかってくれて、よかった。まもんまもん」

内心、マモンの存在を思い出しても、行動理由まで思い出せなかった夏樹は、マモン自らが目的を語ってくれたので知っているふりをした。

だが、夏樹にも言い訳がある。

サタンと知り合ったあと、宇宙で大暴れしたり、天照大神と会ったりと、イベントがたくさんだったのだ。

情報がところてんのように押し出されてしまうのも無理がない。

「じゃあ、とっととサタンさんのところへ行って喧嘩売ってこいよ!」

「ふん。俺は強欲な魔族だが、確実性を狙う魔族でもある。奴は、戦いを挑んでも飄々と逃げるだろう。だからこその、人質だ」

「……てめぇ、まさか――一登を人質にするつもりか!」

「……一登とやらはどちら様だ!?」

「あれ?」

おかしい、と首を傾げた夏樹の尻を小梅が背後から蹴っ飛ばした。

「このぼけぇ! マモンの狙いは俺様だろうが!」

「あー、そうだった! 天照大神様が一登に入れ込んでいたから、もう俺の中でビップ扱いだよ! この場をどうやって一登を傷つけないで解決しようかと悩んでいたもん!」

「……まあ、気持ちはわかるんじゃがな。あと、一番戦闘力ないのも一登じゃし」

「なんか、すみません。足ひっぱっちゃって」

「構わん。夏樹の弟分は俺様にとっても弟分じゃ、ちゃんと守ってやるから安心せい。おい、 肉の壁(銀子) 」

「……まさかとは思いますけど、肉の壁って私のことじゃないっすよね!?」

銀子が小梅の肩を掴んで揺さぶる。

小梅は、否定も肯定もしなかったが、視線を逸らした。それがなによりの答えだった。

「最近、私の扱いが悪いっす」

「ええじゃないか。ビールで蓄えた贅肉でどーんと壁になっとれ!」

「小梅さんだって人のこと言えねーっすよ! 昨日もお風呂上がりに体重計に何度も乗っているところを見ているんすからね!」

「ばっ、それは乙女の秘密じゃろう!」

「紀元前から生きている小梅さんのどこが乙女なんすか!」

「あれじゃ、俺様はロリババってやつじゃろう?」

「お前のどこがロリババじゃぁああああああああああああああああ!」

魔族の幹部であり、七つの大罪の強欲を司るマモンを前に、銀子と小梅は通常運転だった。だが、それが彼女たちらしくて、夏樹の肩から力が抜ける。

「なんかごめんなさいねー」

「まもんまもん。俺は強欲な魔族だが、緊張感を得意としない魔族でもある。このくらいの喧しさは気にしない。だが、そろそろ話をしよう。時間は有限だ。俺は強欲な魔族であるが、時間を大事にする魔族でもあるゆえに」

「とりあえず、じゃあ、喧嘩しよっか?」

「ふっ、ふはははははははは! 俺を前にして、よく啖呵が切れる感心する。まもんまもん。だが、慌てるな。俺はお前と特別争うつもりはない」

「なんだって?」

「アルフォンス・ミカエルは邪魔だったので退場願ったが、お前は私の中で特にどうってことはないのだよ。あくまでも、私の目的は小梅・ルシファーひとり」

マモンの言葉から、アルフォンスを襲ったのが彼らだと確信できた。

この時点で、マモンは完全に敵だ。

なによりも、この次の展開も予想できている。

「どうせ小梅ちゃんを渡せとか言ってくるんだろう!」

「正解だ。まもんまもん。俺は強欲な魔族だが、寛大な魔族でもある。小梅を、建前的には妻にするが、あくまでもサタンへの人質としてだ。しかし、傷つけることはしないと約束しよう。いや、指一本触れないと誓ってもいいだろう」

「そりゃ寛大なことで」

「しかし! 小梅には妻として語尾にまもんまもんと付けてもらう!」

「はわわわわわわ……さすがマモン! 七つの大罪の強欲を司る大魔族だ!」

夏樹がマモンの非道な要求に戦慄して震える。

まもんまもんを要求された小梅は、怒りにしばらく震えていると、ぶつん、と何かが切れたように叫んだ。

「誰がっ、おどれなんぞのっ、妻にっ、なるかっ! つーか、そんなクソダサいっ、語尾をっ、使うわけないじゃろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」