作品タイトル不明
69「お嬢様キャラが言葉を崩すとなんか良くね?」②
「――ほう。言うではないか。俺様はそういうことを言える娘は嫌いじゃないんじゃ」
「ありがとうございます。正直、すっきりしましたわ」
どこかありすはすっきりした顔をしていた。
言いたいことを言えない環境だったのか、思いをずっと秘めていたのか、彼女なりにストレスは溜まっていたのだろう。
「わたくしたちは、同じ境遇の方と協力し、いつも通りの日々を過ごすことを望んでいるのですわ。新たな神々も、帝国の過激思考の人間にも、利用されるのはごめんです」
「その結果、戦うことになりそうなんじゃが?」
「――覚悟の上ですわ。利用され、誰かを傷つけるのであれば、自らの意思で戦う選択をしますわ。わたくしたちは、自分さえ良ければ他の人たちがどうなっても構わないなどと微塵も思っていないのですから」
ありすの言っていることは本心だろうと思う。
小梅も利用されることは好きではない。騙されることも大嫌いだ。
ありすの主張もわからないわけではないが、それでも言いたいことはある。
「おどれの言いたいことはわかった。じゃがのう。結果的に、「帝国」の揉め事に夏樹をスカウトしてどうこうしようちゅーのは、他ならぬおどれが嫌だという利用と違うんかのう?」
「――それはっ」
「違うなら言うてみぃ?」
「…………いえ、違いません」
「ほう、素直ではないか。ここで余計なことを言うようならば、もう話は終わりで、この小梅様とバトルが始まっておったぞ?」
小梅はありすを信用していない。
だが、臆することなくはっきり意見を言える姿には好感を持てる。
ただし、本気で夏樹を利用しようとするのなら、夏樹に会わすことなくこの場で始末しなければならない。
殺しはしないが、叩きのめした上で、いくつか制約をかけることくらい小梅にもできる。
小梅にとって、夏樹が最優先であるのは絶対に変わらない。
「わたくしも、天使様を相手に戦いたいとは思っていませんわ」
「懸命な判断じゃ。それで、続きを話すとええ」
「……わたくしは由良夏樹様をスカウトするために参りました。絶対的な力をお貸しいただきたいのです。わたくしたちの「帝国」に加われなど言うつもりもございません」
「ものは言いようじゃな」
「もちろん、対価もご用意しております。多聞、例のものを」
「――たもんたもんっ」
多聞が紙袋を取り出した。
小梅が首を傾げる。
「すぐに思いつく対価がお金しか浮かばなかったことがお恥ずかしいのですが、わたくしが今まで貯めてきたお金を差し上げます」
「つまり、夏樹を雇うということじゃな?」
「――はい」
「なるほど。ええ根性じゃ。綺麗事を並べる奴らよりよほど好ましいのう。じゃが! 夏樹が動くということは、月読ファミリーが動くっちゅーことじゃ! それ相応の額じゃなければ夏樹を使えると思わんでほしいのぉ!」
「……ご確認ください。もし必要であれば、もう少し良いできると思いますわ」
差し出された紙袋を受け取った小梅は、内心動揺した。
(……あ、あれ? 紙袋が重いんじゃが?)
恐る恐る紙袋の中を覗き、悲鳴を上げた。
「ぎゃぁあああああああああああああああああ!? 大金じゃぁああああああああああああああああ!?」
「一千万用意させていただきました」
想像を超えた金額に、小梅は鼻血を出した。