作品タイトル不明
67「語尾を主張すればいいってもんじゃなくね?」②
「あー、なんじゃ。おどれらの都合は知らんが、いきなり家に押しかけてくるのはルール違反じゃろうて。ヤンキー漫画でもよほどえぐくなければ自宅襲撃はせんぞ?」
「やんきーがどのようなジャンルか知りませんが、わたくしは決して襲撃をしたいわけではないのです」
「じゃったら、せめてアポを取るとかせんかい! せっかくの休みに朝から押し寄せてくる無礼者どもめ!」
「大変申し訳ないと思っております」
小梅の非難に、百合園ありすは素直に謝罪した。
しかし、彼女は言葉を続ける。
「ですが、普段から由良夏樹様は所在不明と申しますか、ご自宅には寝るために帰ってきていると伺っております。学校の方でも、急に姿が消えることもあるそうで……正直、本日お会いできなかったら中学生の制服を用意して中学校に乗り込むことも考えておりましたわ」
「……まあ、ギリいけるじゃろう」
「多聞もセーラー服に久し振りに袖を通すことを楽しみにしているのですよ」
「正直、イケると思いたもんたもん」
「無理じゃろう! おどれアラサーじゃろう! 高校生でも無理があるっちゅーのに中学生はありえんじゃろう! せめて教師枠でなんとかしようとは思わんかったんか!?」
「――っ、たもんたもん」
「その手があったかみたいな顔するのやめい!」
「申し訳ございません、多聞は純粋なため」
「純粋って言葉では済まんじゃろう!?」
「おーい、小梅ちゃん。悪いが玄関で騒がれるとご近所の噂になっちまう。どこかよそでやってくれや!」
「――ちっ」
玄関の中からサタンが注意する。
小梅は舌打ちするが、それもそうか、と考えた。
まず正体不明の輩を家の中に招く趣味はない。
とくに、つい先日、七森千手と虎童子に接触した「帝国」の人間であり、しかも、新たな派閥として「帝国」を名乗っているというどう考えても厄介者だ。
何よりも、現在夏樹は疲れ果てて二度寝中である。
小梅としては、余計な面倒ごとに夏樹を関わらせたくないと考えてしまう。
「どこか場所を変えるんじゃ。ファミレスでも公園でもどこでもええ」
「……わたくしたちを警戒する気持ちはわかります」
「言っておくんじゃが、俺様はおどれらが何か企んでおっても叩き潰すことができる。しないのは、周囲に被害を与えたくないだけじゃ。死にたくなかったら、余計なことを言わんほうがええ」
「肝に銘じておきますわ。――では、わたくしたちの車の中でお話ししましょう」
「車、じゃと」
「多聞」
「―――――たもんたもん」
八咫多聞が日傘をありすに手渡すと、由良家の敷地から出て何かを手招きした。
すると、家の前の道路に黒塗りのリムジンが現れた。
「さあ、こちらにどうぞ」
「想像以上にお金持ちじゃったんじゃが!?」
さすがに小梅も動揺した。