軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54「まもんがまもんでまもんじゃね?」

「蓮、悪いが、予定を早めて動き出すぞ。まもんまもん」

「マモンさん?」

向島市から少し離れた街で、マモンが土地ごと買った一戸建てに、小林蓮は同居していた。

蓮だけではない。彼が今まで保護していた、行き場のない力を持った子供たちも一緒だ。

子供たちが広い庭で笑顔でキャッチボールやサッカーをしている声を聴きながら、エプロンを着けた蓮とマモンは晩御飯の支度をしていた。

「向島市に、小梅の近くによりによって天照大神が降りてきやがった。あの引きこもりの堕落女神が……まさか俺がちょっかい出そうしているのが気づかれた可能性がある。まったくやってられないぜ、まもんまもん」

「なるほど。相手も警戒しているってことなんですねぇ。まもんまもん」

今日の晩御飯はハヤシライスだ。

ルーを使っているが、ごろっとした野菜と、とろけるほど煮込んだ牛すじ肉をふんだんに入れてある。

マモンは隠し味にワインを入れたかったようだが、子供ばかりなので、酒類は控えてコンソメと醤油を少し。

あとは、しっかり煮込めばコクのある美味しいハヤシライスの出来上がりだ。

白米はすでに炊けている。ツヤツヤの、大粒な白米だ。

蓮も子供たちも、最初こそ温かい食事、住まいに戸惑ったが、すぐに慣れた。

子供はマモンのことをマモンおじさんと呼んで懐いており、「まもんまもん」となにかあるたびに口にしてしまう癖がついてしまっている。

「マモンさんはサタンさんをぶっ殺して、サマエルさんを魔王にしたいんだよね?」

「まもんまもん」

「なら、サタンさんを直接ぶっ殺せないの?」

「それができたら苦労しない。俺は強欲な魔族だが、勇敢な魔族でもある。しかし、サタンは魔界を統一して魔王に君臨してからやる気なし男になってしまった。まもんまもんと挑んでも奴はのらりくらりとかわしてしまう」

「あー。それで娘さんを?」

「一応、婚約者候補なのでな、利用できる者は利用させてもらう。サタンは小梅にだけは甘いからな。しかし、俺は強欲な魔族だが、紳士な魔族でもある。小梅は利用するが、傷つけるつもりはない」

「まもんまもん、だね」

「まもんまもん、だ」

話をしている間に、ハヤシライスが出来上がった。

子供たちのお皿を用意すると、お米とルーを盛り付けていく。もちろん、サラダも忘れない。子供たちは生野菜の独特感を嫌うので、ポテトサラダを選択している。もちろん、スーパーで買ったものではなく、ちゃんとじゃがいもを茹でるところから始めている。

「あのさ、マモンさん」

「なんだ、蓮?」

「サタンに喧嘩売るのはいいんだ。僕もいろいろこの世の中に思うことはあるから、恩人のマモンさんと一緒に最後まで戦う覚悟はしている、でも――」

「みなまで言うな。俺は強欲な魔族だが、察しのいい魔族でもある。子供たちが気掛かりなのだろう? わかっている。子供たちは俺が信頼できる者を後見人にしておこう。力の制御ができるようになれば、普通の子供と変わらず学校にも行けるようになるだろう」

「ありがとう、マモンさん。本当に、ありがとう」

「気にすることはない。俺はお前に言った。俺を利用しろとな。俺はお前に対価を支払うだけだ。まもんまもん」

「ありがとう、まもんまもん」

「まもんまもんまもん」

「まもんまもんまもん」

まもんまもん、言っていると、茹でたいんげんを皿に盛り付けていた少女が「もう、我慢限界!」と叫んだ。

「だーっ! もうさっきからまもんまもんうるっさいのよ! あんたら、普通に会話もできないの!? というか、自分の名前を語尾にするとか、意味わかんない! まもんまもん!」

「そういえば、この子はマモンさんの子供?」

「まもんまもん。俺は強欲な魔族だが、純真な魔族でもある。サマエル様以外に想いたい人はいない。よって、この娘は不愉快ながら協力者だ」

「協力者ってことは……うーん、ちょっと変な感じがするけど、魔族さん?」

「ぶっぶー! 女神でーす! 愛を司る女神でーす! 名前はまだないからぁ、愛ちゃんって呼ばせてあげる! まもんまもん!」

すっかり愛の女神にも「まもんまもん」が刷り込まれてしまったようだ。

月読命やルシフェルが警戒する、新しい神々の一柱である「愛の女神」は、マモンの協力者だった。

とはいえ、特別力を貸しているわけではない。

向島市の情報などを届けてくれるのだが、お互いに利用し合っている関係だった。

愛の女神たちの目的は、古い神々や魔族を排除すること。

しかし、すべてを排除するつもりはないようだ。

女神たちは新しい神話を作りたい。そのために、敵対する悪役を必要としていた。

マモンはあくまでも利害の一致で協力しているが、彼女たちに与したわけではない。しかし、すでに新しい神々と繋がっている神や魔族がいる。

その大半が、大した立場や力がないため、新しい神話で名を売ろうと企む、神や魔族の中では雑魚のような存在だ。しかし、手数がない新たな神々にとっては貴重な手駒らしい。

「私も仕込みは終わったから、楽しみにしていてねー」

「ふん。貴様程度の神がどんなことができるのか楽しみだ。では、楽しい食事としよう。俺は強欲な魔族だ。これが最後の晩餐だとは言わない。小梅を捕縛し、サタンを倒して玉座から引き摺り下ろし、サマエル様が魔王になった暁には――りんごを隠し味にしたカレーを作ろうではないか! もちろん、甘口のな! まもんまもん!」

「まもんまもん!」

「まもんまもん! って、やめてくんない! つられちゃうんだけど!」