作品タイトル不明
7「やべーのにはやべーのが憑いてるんじゃね?」③
「最近の子は控えめだな。だが、好ましい。わかるぞ、由良夏樹。道具に頼らず、己で始まりの海と向かい合いたい――そう言いたいのだな?」
「……………はいっ!」
「良い返事だ。ならば、俺は静かに見守るとしよう」
夏樹は良い感じに勘違いをしてくれている大地の神に余計なことを言うことはしなかった。
下手なことを言って、次はふんどしから何が出てくるのかわかったものではない。
「せっかくだから炎の神を紹介しよう。ついてこい」
「うっす! お願いします!」
手招きした大地の神は、砂の城を作り上げて腕を組み「むふー」と満足そうに眺めている赤毛の少女の元へ夏樹と向かった。
「満足したか、炎の神」
「――うん」
炎の神と呼ばれた少女は、赤髪を短めにそろえた小柄でボーイッシュな子だった。
年齢的には、十二歳ほどだろうか。
ハーフパンツとタンクトップ、そしてビーチサンダルを身につける少女の肌はこんがりと日に焼けている。だが、元の肌は白いのだろう。タンクトップが少し動くと、日に焼けていない肌が覗く。
夏休みに全力で遊んで日焼けをした時のことを思い出す、夏樹も一登も小学生の頃の夏休みは同じように日に焼けていた。
炎の神の視線が夏樹に向く。
「こんにちは」
「こんにちは、炎の神さん! 由良夏樹です! お疲れ様です!」
夏樹は深々と腰を折り、挨拶をした。
目があっただけで、やばい、と思った。
この中で一番力を持っているのが、炎の神だ。そう感じたのだ。
「もっと気楽でいいよ。僕は炎の神だよ。よろしくね」
「よろしくお願いします! 僕っ子はかなり高得点だと思います!」
「何を言っているんだ、お前は」
てしん、と大地の神が夏樹の頭を叩いた。
「とりあえず顔を上げて」
「うっす!」
「………………」
じぃ、っと炎の神に見つめられ、夏樹は緊張した。
まるで自分の内側をすべて見られているような感覚を覚えるが、その視線もすぐになくなる。
「始まりの海の力を持っている割にはまともだと思ったんだけど、うん、ちゃんと守られているんだね。よかった」
「それって、どういう」
「一応、言っとくけど、僕は炎神だけど、炎の勇者三原一登に力を与えているわけじゃ無いよ」
夏樹の疑問は遮られた。
だが、一登の名が出てきたことで、新たな疑問が浮かんだ。
「……マジっすか」
「うん、マジ。ただ、彼の持つ火輪の剣は僕の身体の一部なんだ。だから彼の人となりは知っている。彼は争うことは好まない子だったから僕は見ているだけだったけど、成長次第では僕が本気で力を与えてもいいと思う」
「うわぉ。あ、でも」
「うん」
「力を与えるとか与えないとか、そういうの抜きで一登と接してやってください。一登もその方が嬉しいと思いますから」
「……わかった。そのうち、遊びにいく」
炎の神は、はじめて朗らかに笑った。
「ところで――」
夏樹が炎の神と大地の神にずっと浮かべていた疑問を問いかけようとした時だった、
「――マヒマヒとったどーっ!」
シュノーケリングをしていたはずの陽キャの神が大きなシイラを抱き抱えて海から上がってきた。
「でっけぇええええええええええええええええ! ていうか、俺の中にシイラいるのかよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」