作品タイトル不明
5「やべーのにはやべーのが憑いているんじゃね?」①
びしっ、と腰を折って挨拶をした夏樹に少し驚いた顔をした。
「やんちゃだと思っていたが、礼儀正しいいい子じゃないか。まったく、我が宿主は人外が大好きだと毎日はしゃいでいる仕方がない奴だが……まあ、なんだ、今後も仲良くしてやってくれると嬉しい」
「うっす! 祐介くんとはマブダチっすから、今後も仲良くさせていただけたら嬉しいです!」
「よろしく頼む」
夏樹は全力で挨拶をしながら震えていた。
ふんどし姿の大地の神はやばいと本能が警告しているのだ。
そもそもなぜ大地の神までもが夏樹の夢の中にいるのかまったくわからないが、余計なことは言わない。
何がきっかけになって不評を買ってしまうのかわからないのだから、夏樹は相手に失礼のないようにするだけだ。
(……大地の神こわいよぉ。これじゃあ、シュノーケリングする気満々の陽キャの神の方がマシだよぉ。ホラーさんの方がマシだよぉ。知的な眼鏡をかけたクール系イケメンだからふんどし姿がより怖いんだよぉ)
「……しかし、なんだ。宿主によくしてくれている由良夏樹に何もしないというのは大地の神として申し訳がない」
「い、いえいえ、そんな、間に合っています」
「……いや、現実問題として海の神に困っているではないか?」
「あ、そっちですね。はい、困っています!」
「俺もこっちの海の神ではなく、お前の中にいる海の神とは知り合って長いんだが……」
「そうなんですか?」
「ああ、少し面倒くさい話になるが、俺も、ここにいる海の神も、あっちで砂の城を作っている炎の神も、売店に行った風の神も――この世界に生まれ、共にある神だ。俺にとっても、お前に宿る海の神は姉貴分であるんだ」
「……えっと」
「お前の海の勇者としての力は理解しているな?」
「……地球の海じゃなくて、異世界の海でもなくて、宇宙の最初の海からパワーをもらっているって感じなんですけど」
「そうだ。つまり、俺たち地球産の神とは力も格も違う。違うどころじゃない、俺たちなんてお前の中にいる海の神に比べたら三下だ」
この場にいる海の神たちは、地球に存在する自然がそのまま神格を得た、「そのもの」だ。
だが、夏樹が「ホラーさん」と呼ぶ、海の神は違う。
地球ではない、遥か遠いどこかの星で生まれた『最古の海』なのだ。
「母なる海と言うべきか、始まりの海と言うべきか。本来ならば神格も意思も持たない概念だけの存在だった」
「だった?」
「俺にも、なぜ最古の海である彼女が意思を持ったのかわからない。数多くの海が生まれたからか、その海と繋がったことで自我が目覚めたのか……すまないが、わからん。ひとつだけ言えるのは、由良夏樹を海の勇者にしている者は俺たち神々と同じ存在ではない。――海、そのものだ」