軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

48「実はワクワクじゃね?」②

食事を済ませた夏樹たちは、銀子が母から借りてきたミニバンに乗って水無月家に向かっていた。

一登は早めに由良家を訪れ、朝食も一緒に食べている。興奮して昨日は眠れなかったようだ。

母にはちゃんと中学校に行くふりをして「いってきます」と言い、家を出てから仕事ということにした銀子と合流しているので問題はない。

小梅は一緒に出発せず、母がパートに出かけてから窓からひとっ飛びして合流したのだ。

「ところでさ、小梅ちゃんは天照大神様って知ってる?」

「むかーしに何度か会ったことがあるくらいじゃなぁ。もう一千年以上会っとらんのでようわからん」

「相変わらずスケールが神!」

夏樹が小梅に尋ねると、相変わらずスケールがでかい返答がくる。

一登は小梅がそれほど長く生きているのだと知り驚きを隠せずにいる。

運転席の銀子が「相変わらず熟女っすね」と茶化し、助手席の小梅にこづかれていた。

「ワクワクするよね。夏樹くんと学校サボったことはあるけど、まさか神様に会いにいくことになるなんて。数日前の俺が知ったら……気絶するだろうな」

「俺でも同じだよ!」

「私も同じっすね。もう慣れちゃいましたけどね! 一登くんに美人なお姉さんからのアドバイスっす! 夏樹くんと二日、三日一緒にいれば――慣れます!」

「そっか……慣れの問題なんだ。でも、そうだよね。よく考えたら、夏樹くんって前々から行動力がありえなかったもんね」

銀子の言葉に一登が納得するように頷いているが、夏樹としては心当たりがない。

「え? そうだっけ?」

「そうだよ! クソ兄貴絡みで逆恨みした高校生十人をぶっ飛ばしたり、クソ兄貴が手を出した子が碌でもない子で怖い自由業の方に巻き込まれた俺が連れていかれそうになったとき全員ボコしてたし、やっぱりクソ兄貴のせいで大学のレスリング部に囲まれたときだって返り討ちにしていたし」

「日常あるあるだろ?」

「ないから!」

「というか、基本的に一登くんのお兄さんが原因っていうのが笑えないっすね」

「疫病神でも一緒にされたくないじゃろうなぁ!」

物心ついた頃から優斗に巻き込まれている夏樹にとって、一登が言ったことなど氷山の一角でしかない。

もっと面倒なことはあったし、もっと危険なこともあった。

「はははは。異世界のほうが酷かったから大したことないって」

「クソ兄貴のせいで大変な目に遭っている夏樹くんが酷いって言う異世界って最悪の世界じゃないかな?」

「少なくとも召喚も転生もしたくない世界っすよね」

銀子の言葉に、小梅と一登がうんうんと頷いた。

「そういえば、そのクソ兄貴はどうしているの?」

「あー、なんていうか、昨晩、連絡が唯一取れた女の子に会いに行くって言って出て行ったっきりなんだよね。夏樹くんの話を聞く限り、魅了って解除されていると思うんだけど」

「魅了抜きで優斗を好きな子だっているんじゃない?」

「……あー。そういう可能性もあるのか。なんにせよ、今朝は静かでよかったよ」

夏樹としては優斗の行動は気にならない。もう気にできないのだ。

それよりも、天照大神と早く会いたくてわくわくが止まらない。

「あ、見えたっすよ。みなさんお出迎えっすね」

他愛無い話をしている間に、車は水無月家に近づくと、家の前に数人の人影が見える。

水無月家当主水無月茅をはじめ、都、澪、星雲、雲海、そして柊という夏樹の知る面々だ。

どことなく疲れた顔をしているのは気のせいでは無いだろう。

大物中の大物の神が、土地神として降臨したのだ。水無月家が対応に困るのは当然の事だろう。

「どうも、おはようございます。お待たせしちゃいましたか?」

車を降りた夏樹が挨拶をすると、全員が頭を下げた。

銀子、一登も慌てて下げるが、小梅だけは胸を張っていた。

「由良夏樹様、再びこうして水無月家に足を運んでくださり感謝致します。皆様方も、こちらの事情に巻き込んでしまい申し訳ございません」

「あ、いえ、別にいいんですけど、俺にできることって何かありますか? 戦う以外に、なんの役に立つのかわからないんですけど」

実を言うと、水無月家に頼ってもらっても夏樹が天照大神を相手になにができるのか疑問だった。

倒せ、と言われたら「喜んで!」と返事をするが、そうではない。

今さらながら、不思議に思う。

すると、茅は困った顔をした。

「その、上の方が夏樹様なら大丈夫だろうと助言してくださいましたので」

「――上の方ってどなたですか!?」