作品タイトル不明
3「まさかの弟さんじゃね!?」①
「きゅ、急に真顔になるじゃん。ちょっとびっくりした。じゃ、そろそろ真面目に話しますか」
「ぜひそうしてください!」
「姉ちゃんが世話になっているから、ちょっとご挨拶に来たんだぜ」
「姉ちゃんって誰!? 花子さんのこと!?」
「トイレの?」
「ちげーよ! どなたか、この世界にお姉様はいらっしゃいませんか!? 美脚なら嬉しいです!」
「はははははっ、なっちゃんはマジで面白えなぁ!」
残念だが、夏樹は目の前にいる陽キャの塊のような神の姉を世話した覚えはない。
姉属性は花子さんと澪さんくらいしか知らないのだ。
「えっと、なんつーか、なっちゃん夢見るじゃん」
「今もね!」
「そうじゃなくて、怖い夢見てね?」
「見てる!」
「なんか無駄に怖い女出てこね?」
「出てくりゅ!」
「それ、俺の姉ちゃん」
「…………まじかー。あ、すみません、お姉様には毎晩お世話になって……ねえからぁああああああああああああああああ! 怖いから! なんでホラーなの! 月読先生が失神するレベルなんですけどぉ! ちょっと、弟なら責任とって引き取るか意思疎通するかなんかしてぇ!」
夏樹は涙目で陽キャの神のアロハを掴んで揺さぶった。
まさかホラーさんの弟さんだとは思わなかった。
だが、身内ならば逃さない。
ぜひとも責任を取ってもらおうじゃないか。
「待って待って待って、姉ちゃんがホラーしているのは俺のせいじゃないから! 生まれながらあんな感じだから! 俺も昔からこんな感じだし!」
「……というか、俺の海の力があのホラーさんでいいんだよね?」
「ホラーさんて、めっちゃウケるんですけど」
「笑えねえよ!?」
陽キャの神から腕を話した夏樹は、砂場に座り込んだ。
気のせいだろうか、今も遠くから視線を感じる。
「まあまあ、なっちゃん。姉ちゃんも不器用でさ。俺たちは、誰かに力を与えたいとか思ったこともないし、そんなことする必要もないってずっと思っていたんだ。でも、姉ちゃんたちは選んだ」
「……そう言われても」
「ただ、初めてのことだからどうしていいのかわからないんだよ。運が悪いことに、なっちゃんには姉ちゃんの力は強すぎるし、蒼穹の星槍がおまけでくっついているし、いやーついてねえな姉ちゃん! それに、なっちゃんには……あ、これは言わない方がいいのかな?」
「待って、不穏になること言わないで! 俺に何があるの!? まだ何かあるの!?」
「ははははは! 悪いことはないからへーきへーき!」
「……本当に平気なのかなぁ」
夏樹の隣に陽キャの神が座り、また肩を組んだ。
「俺も姉ちゃんも、あいつらもずっとずっと彷徨い続けていたんだ。だから、姉ちゃんのなっちゃんへの思い入れは、まあ重いんだけど、受け止めてやってちょうだい!」
「……どうやって?」
「……今の姉ちゃんは俺も怖いから無理じゃんって思う。昔はあんな感じじゃなかったんだけど、どこであんなにホラーな感じを覚えたのか謎だよねぇ」
「弟でしょ、なんとかして?」
「うーん、まあ、じゃあ、シュノーケリングのあとでちょっと会話を試みてみるよ」
「……あれ? シュノーケリングの方が優先なの?」
「そりゃそうさ!」
にかっ、と陽キャの神は白い歯を見せて笑った。
「だって、海の神だもん!」