作品タイトル不明
1「海の神と見せかけて陽キャの神じゃね?」①
「うぇーい! 初めまして、なっちゃん! こんにちは! ――海の神でぃーす!」
「……え?」
「――海の神でぅーす!」
「……陽キャの神?」
「いやいや、なんでそんな風に聞こえちゃったの!? マジうけるんですけど!」
笑いながら海の神を語る青年が、夏樹の肩をバンバン叩く。
近づいてみると、夏樹よりもだいぶ背が高い。おそらく、一八〇センチ後半あるだろう。
なおさら相容れない存在である。
「待って、待って待って! どうして? どうして俺の夢の中に陽キャがいるの!? 陽キャの神がいるの!?」
「やだなぁ、陽キャの神じゃないって」
「え? 陽キャの精霊さん?」
「あはははは、ウケる! そんな精霊いないって! あ、いるかも?」
何が面白いのか、陽キャの青年は笑いながら夏樹と肩を組んだ。
とても馴れ馴れしい。
「んじゃ、ま、とりあえずお近づきの印にどーぞ」
「いや、なっちゃん未成年だからお酒飲めないし。こんなパリピが飲む様な瓶を渡されても困るし」
「夢の中だからへーきへーき!」
「知らない人からなんかもらっちゃだめって教わったもん!」
「なーに言ってんの、自己紹介したら親友だろ!」
「いや、マジでぐいぐい来るなこいつ! マジで陽の存在だ! 俺みたいな陰の存在とは相容れないでしょ!」
「なっちゃんも十分、陽の存在だと思うんだけどぁ!」
「あと、なんか無駄に力強いし!」
馴れ馴れしく組んできた肩を外そうとするが、力があって難しい。
思えば、夢の世界で魔力を使ったことはなかったかもしれないと思い、力を入れようとして、
「はーい、だめー!」
まるでナンパされた女性が取り出したスマホを奪われたように、魔力を霧散させられてしまった。
「そんな警戒しないでよー。変なことしないって。俺、こう見えて地元じゃ紳士で通ってるんだぜ?」
「地元ってどこだよ!? あと、自分で紳士って言う奴を信用できるわけねえだろ! 人呼ぶぞ!」
「いや、無理っしょ。夢の中に誰か呼べるならそれはそれですごいから。俺たちだって、月読っちがなっちゃんの夢の中に入ったことでできたわずかな縁を辿ってここにきたんだからさー!」
「え? つまり俺の夢の中に陽キャがいるのは月読先生のせい!?」
戦慄する夏樹だったが、今、無視できない言葉が聞こえた気がした。
「……待って」
「うん?」
「今、俺たちって言った?」
「言った! ほら、あっちのパラソルの下でクール気取って読書している奴が、大地の神」
「いやぁああああああああああああああああああああ!」
「あそこで全力で砂の城を作ってるのが炎の神」
「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「あと風の神は売店に食べ物買いに行ってる」
「んほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
――勢ぞろいだった。
夏樹の意識が遠のいていく。
このまま気絶できれば、夢から覚めるかもしれない。
そう考えて意識を委ねるが、陽キャの逞しい腕に強く抱かれて戻ってきてしまった。
「まあまあ、お話しようよなっちゃん!」