作品タイトル不明
間話「勝負下着ってなんの勝負するのかわかんなくね?」
七つの大罪の強欲を司る魔族――マモンは、向島市にある由良家の庭で洗濯物を干していた。
「――向島市のまもんまもんな良い天気だ。絶好の洗濯日和と見たでまもんまもん!」
「――いや、青森帰れよ!」
割烹着を身につけたマモンが由良家の洗濯物を手際よく物干し竿に干していく。
そんなマモンを、由良家の主夫と貸している魔王サタンがツッコミを入れた。
「まもんっ、所詮魔王はこの程度でまもんまもん。このマモンは強欲な魔族だが、一宿一飯の恩義を忘れない紳士でもある。せめて洗濯と夕食の支度くらいしてから帰りたいのでまもんまもん」
「夕方までいる気かよ! ていうか、そのノリじゃ晩御飯食べて泊まっていくだろ!」
「お誘いいただいたら受けるのが紳士でまもんまもん」
「別にそれは紳士じゃねえし! やんわりとお断りして帰れよ!」
「これだから魔王は……まもんまもん」
「ちゃんと最後まで言えよ! 俺はサマエルと違ってまもんまもん語はわからないんだよ!」
そう言いながらサタンも洗濯物を干す手を止めない。
主夫としての意地があるのだ。
「……俺様的には、クソ親父も魔界に帰らんかいと思うんじゃが」
なぜかセーラー服を装備している小梅が呆れた顔をして父親とマモンの言い争いに口を挟んだ。
「小梅ちゃん! パパ、そんなこと言われたら寂しい!」
「……きんもー。ちゅーか、俺様の下着を握りしめて悲しむとかやめて欲しいんじゃが!」
「おっと失礼した。……しかし、この下着じゃ夏樹を悩殺できないな。パパが素敵な下着を買ってあげようじゃないか」
「……きもすぎじゃろう。夏樹みたいな思春期ボーイは、下着ならなんでもええんじゃよ。干してある下着をチラチラ見ておるのはすでの調査済みじゃ。むしろ、クソ親父とクソまもんのエグいTバッグとかドン引きじゃと思うんじゃが!」
「……え? サタンさんのパンツ普通だと思うんだけど」
「……ルシファー・小梅よ。紳士はパンツでまもんまもんと決まるのだ。このくらい、標準装備でまもんまもん」
「いやエグいじゃろうて!」
「えー?」
「まもんー?」
サタンとマモンは仲良く首を傾げた。
「おどれら仲ええじゃろう!」
「こんなまもんまもん野郎と俺が仲良いわけがないでしょう! というか、どうして小梅ちゃんはセーラー服着ているの? JKはいけると思うけどJCはさすがにキツいというか痛々しいというか」
「そもそも、セーラー服を持っているのが謎でまもんまもん」
「……お、おどれら言いたい放題じゃな! これは春子ママからもらったセーラー服じゃぞ!」
「……小梅ちゃん、言い値で買おう」
「きんもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「まんもぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
小梅のきているセーラー服は、無駄にスカートが長い。
昭和後期から平成初期にいた「スケバン」スタイルだった。
「ええ加減にせえよ、クソ親父! このセーラー服は俺様のもんじゃ! もう俺様がきとるんじゃから、春子ママの匂いもせんぞ! むしろクリーニング済みじゃったから!」
「魔王なら残りがをかぎ分けることができる」
「……魔王きもすぎじゃろ」
「魔王が気持ち悪いのはさておくとしてまもんまもん、なぜルシファー・小梅は痛々しい格好をしているのでまもんまもん?」
「次、痛々しいと言ったら張り倒すぞ!? ……まあええ、バイトじゃ」
「なに?」
「まもん?」
日本に来るまでは魔族専門の賞金稼ぎをしていた小梅だが、現在は働いていない。
日本を満喫するんじゃ、と本人は言っているが、家の中でダラダラしている日々だった。
そんな小梅がバイトをすると聞き、サタンの目から涙が溢れた。
「――小梅ちゃんがバイト……立派になって」
「十分立派じゃが!? なんで一度も働いたことのない娘に対するリアクションみたいになっとるんじゃ!?」
「待て! セーラー服でバイトって、いかがわしいことじゃないだろうな! パパ許しませんよ!」
「いかがわしくなんてないんじゃが!? セーラー服とバイトだけでいかがわしいと発想するおどれの方がいかがわしいんじゃが!?」
「じゃ、じゃあ、どんなバイトを?」
サタンが震える声で尋ねると、小梅は胸を張った。
「なんでも向島市で女学生を狙う不届者がおるらしい。そこで、俺様と花子おねえちゃんが制服を装備して、不届者を捕縛するんじゃ! 水無月家依頼じゃから報酬は期待できるんじゃ!」
「…………小梅ちゃんはさておき、花子はキツすぎるって」
「…………まもんまもん」
「……俺様もそう思ったんじゃが、ウキウキして支度しとるお姉ちゃんには何も言えんかったんじゃ」
由良家の庭に、気まずい沈黙が流れた。
――由良家は今日も平和だった。