作品タイトル不明
109「死の神の要求やばくね?」②
加座間吉座は死の神を見誤っていた。
死の神は、人々の生活に興味がないゆえに、金の価値もわかっていないと思っていたのだ。
それでも一千万円を渡したのは、彼が大金を欲しいと言ったからだ。
十分すぎるほど大金だ。
むしろ、一億円を要求されるとは思わなかった。
死の神に把握されているとは思っていなかったが、一億円ならば用意はできる。
人外をコレクションしたい好事家たちから、活動資金ももらっているのだ。
リスクがあるビジネスゆえ儲かることは、父が人外を保護として集めている時に金がかかっていたことを見れば理解できた。だから、その逆をやろうと考えたのだ。
「私を、殺すのか?」
吉座の声は震えていた。
加座間家が念願の霊能力を手に入れたとしても、「そこそこ」でしかない。
特に吉座は、霊能力者として活動するつもりはなかったので、旧家の霊能力者に比べて数段力がないのだ。
だが、その代わりに、金で人を雇い、武器を集めることができる。
それも立派な力だ。
――だが、神に通用する力ではないことくらいわかっている。
「加座間吉座。貴様が金を払いたくない、契約を破棄するというのであれば、殺すことはしない。ただ私は次に行くだけだ」
「そんな」
「だが、私を利用して金を払わないのであれば、殺す」
「……っ」
死の神の殺気に、吉座の呼吸が止まる。
大きすぎる誤算だった。
世間知らずの神ならば利用できると思っていたが、吉座が想像しているよりもずっと俗世を理解している神だった。
ただ、今まで興味がないから、知っていることを表に出していなかっただけだ。
「どうする? お前を守る私がいなくなって、困らないのであれば、契約を破棄すると言え。今後も助けて欲しいのであれば、金を払え。私は難しいことは言っていないのだが、もっと砕いて説明すべきか?」
殺気が消えた。
吉座から返事を聞くために、死の神が意図的に殺気を消したのだ。
吉座は、涙を流していたことに気づく。
死が目の前に、いた。
なぜ気づかなかったのか。
どうしてわからなかったのか。
――それでも吉座には意地があった。
――ここで金を渡してしまうことは、どうしてもできなかった。
「いいだろう。一億というのはありえないが、払えないことはない。代わりに、一億を払ってもいいと私を納得させてくれ」
「……別にお前が納得しなくても構わない」
「ならば他にいけばいい! 金を求めているようだが、すぐに大金を支払ってくれる人間がいると思うなよ! 死の神よ、お前が思っている以上に、人間は汚くがめついんだ!」
「…………それで、俺は何をすればいい?」
死の神は吉座の願いを聞くことに決めたようだ。
その方が早い、と考えたのだろう。
「俺の父親、加座間源蔵とその関係者を、そして俺を馬鹿にしやがった由良夏樹とあの場にいた奴らを全員殺せ!」