作品タイトル不明
108「死の神の要求やばくね?」①
新たな神々の中でも上位の実力を持つ十天に数えられる「死の神」は、雇い主である加座間吉座に珍しく自分から声をかけていた。
「――加座間吉座。そろそろ約束の金を貰おうか」
加座間家所有のマンションの一室で、優雅にコーヒーを飲んでいた吉座は驚いた顔をしたが、すぐに侮蔑の表情に切り替えた。
「これはこれは、図々しい神というのもいるのだな。初めてそちらから声をかけてきたかと思えば、金の催促とは……呆れてしまうな。一体何に使っているのか知らないが、契約時に支払った金では足りたいとでも言うのか?」
吉座は死の神を神として崇めていない。
新たな神々だから神として認めないと言うわけではない。
仮に、目の前に月読命が現れても、ゴッドが現れても、崇めることはないだろう。
吉座にとって、神など金儲けの手段のひとつでしかないのだ。
「足りない。私は、仕事をしている。先日は、お前を救った。報酬は支払われるべきだ」
「がめつい神だ!」
吉座は死の神との契約時に一千万円の金を渡している。
裏ビジネスを始めるにあたり、スポンサーから大金をもらっているが一千万は大きい金額だった。
「……それで、いくら欲しいんだ? 俺はあんたから具体的な数字を聞いたことがない。とにかくたくさんの金が欲しいというから、とりあえず一千万くれてやったんだぞ!」
強力な力を持つ神を一千万円で味方にできるのは安すぎると思っていた。
しかも、死を与える神だ。
同じ神を相手にしない限り、負けることはないと吉座は考えいる。
いくつか仕事を与えて、成功報酬として支払っていこうとしていたので、ここで金をよこせと言われるのは少々想定外だ。
金を要求しておきながら、何に使っているのかわからないことも不気味だった。
「……一億」
「……………………は?」
吉座は耳を疑った。
「今、なんて言った? いくら、だと?」
「一億よこせ」
「――ふ」
死の神の要求に、吉座が身体を震わせる。
「――ふざけるな! 一億だと!? 神が! 人間の金の価値を理解していないのか!?」
「十分に理解しているつもりだ」
「ならば!」
「だが、貴様は私に言った。金をくれると。我々は利害関係で組んでいる。私はお前に力を貸そう。お前を守ろう。実際、すでに私はお前の危機を救っている。お前を助けている。お前の命を救ったこともある。教えてくれ、お前の命の価値は一千万か? それとももっと高いのか? それとも、もっと低いのか?」
吉座が何かを言うよりも早く、死の神の手が伸びた。
「――がっ」
死の神の腕は吉座の首を掴み持ち上げる。
「貴様は私が世間や金に疎いと思っているだろう? 容易く利用できると思っているだろう? だが、私は人間の生活に興味がなかっただけで愚かではない。貴様が国内外の好事家を相手に力の弱い妖怪などを売って儲けていることは知っている。事前に金ももらっていることも知っている。加座間家の当主を敵に回しても、金を持っていることを知っている。その上で、言っているのだ。一億をよこせ、と」
「ぐっ、はっ……やめ、手を、はな、せ」
苦しげな吉座の声に、死の神は指から力を抜いた。
その場にくずれ落ちた吉座が咳き込みながら、死の神を睨む。
だが、死の神は何も気にならない。
矮小な人間に睨まれたところで、痒くもないのだ。
「貴様が一億を払っても問題ないことは知っている。その上で、よこせと言っている。私は不満を覚えている。神を利用しようとするには、金が少ないと」
死の神はゆっくりと吉座に顔を近づけた。
「金をよこせ。さもなければ――」
「死を与えるとでも言うのか!」
「その通りだ」
「――え?」