作品タイトル不明
間話「太陽神じゃ、ね?」
日曜日。
水無月家一族全員は、新しく来てくださる土地神をお迎えするために正座をして待っていた。
向島市の土地で生まれ、共に育った土地神みずちとは違い、神界から土地神として送られてくるお方に不作法などあってはならぬと全員が正装をしていた。
当主水無月茅、澪、都、星雲、雲海、八咫柊と言った面々を始め、現役を引退した老人、長老会の人間、分家の当主と次期跡取りなど主要な人物が集まっている。
新たな土地神に拝謁したいと言う者は多かったが、末端の人間が押しかけては不敬になると判断され、あくまでも水無月家直系の人間と、分家の主だった人間だけが、今日、水無月家に来ることを許されている。
由良夏樹が土地神みずちとの戦いで破壊した離れはすでに修繕済みである。
先日、当主茅宛に『那美婆』を名乗る女性から電話があり、「適当に住まいを用意してくれればそれでいい。土地神として甘やかさず、厳しくしておくれ」と伝えられた。
電話の主の正体を考えないことにして落ち着こうとするも、神を甘やかさず厳しくとはどのようにすればいいのか、と悩む。おかげで頭痛薬の一番いい奴を買って飲むことになってしまった。
――そして、今日。
水無月家に新たな土地神が降臨する。
その瞬間は、すぐに訪れた。
圧倒的な神気が太陽から注ぐ光のように降り注いだのだ。
いつの間にか、空に雲ひとつない蒼穹が広がっていた。
――来た。と、誰もが感じ取り、頭を下げる。
刹那、とん、とん、とん、とん、とん、とまるで階段でも降りているような軽やかな足音と共に、神特有の威圧感を覚えた。
足音と威圧感はどんどん近づき、そして、水無月家の面々の前に立ったのがわかった。
「面を上げてどーぞ」
神は少しフランクらしい。
茅は肩の力を抜く。
神によっては、傍若無人な者もいることを知っている。
だが、神の声音は、優しく、穏やかなものだった。
神が顔を上げるように言ったのならば、従わなければ不敬に当たる。
若干の緊張を抱きながら、土地神みずち以外の神と拝謁できる興奮を覚えて顔を上げた一同は、
「…………………………」
目を丸くして驚いた。
その理由は神の姿にあった。
どこか神々しさはあるものの、よれよれの紺色のスウェットにサンダルを履いた、ぼさぼさの髪を伸ばした二十代半ばほどの女性だった。
水無月家の面々は、「どちらの神様だろう?」と首を傾げたが、目の前の女性と神がつながらない。
みずちと比べられないほど強く、神々しい神気を持っているにもかかわらず、分厚い眼鏡をかけた女性は、どことなくくたびれた感じだった。
なんとも言えない視線が集まる中、わかっていました、とばかりに女性は肩を竦めた。
「出迎えごくろーさんです。自分は天照大神でーす。よろしくお願いしますね。ふひひ」
次の瞬間、水無月家一同から絶叫が放たれた。