軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79「晩御飯の時間じゃね?」②

「夏樹、鉢植えと話していないでお風呂入ってきなさい」

「――へい!」

どう収集をつけようと悩んでいた一登の代わりに、うがい手洗いをして着替えてきた春子が現れると、茶の間の空気が変わる。

夏樹は敬礼して風呂場に行き、騒いでいた小梅たちも静かになって春子に「お仕事お疲れ様でした」と一礼をした。

「ただいま。今日は賑やかな夕食になって嬉しいわ。サタンさんには連絡がなくごめんなさいね」

「いいえ! こんなこともあろうかと大目に作ってあったので大丈夫でしゅ!」

「さすがサタンさんね」

「うれちい!」

「……いや、キモすぎじゃろ、この魔王」

「……まもんまもん」

顔を赤くしてくねくねする魔王サタンに、娘の小梅と、一応は配下であるマモンはドン引きだ。

「一登くんも、いつも夏樹がごめんなさいね。きっと杏ちゃんと同じように振り回されているんでしょうね。いつでも張り倒すから遠慮なく言ってね」

「あはははは、そうします」

春子が冗談で息子を張り倒すなど言わないことを知っている一登は、夏樹が何かやらかしたら告げ口をしようと決めた。

文字通り、本当に張り倒してくれること間違いない。

「さ、一登くんも、杏ちゃんも座って座って。マモンさんはビールでよろしかったかしら」

「ありがとうございまもんまもん。ありがたくいただきまもんまもん」

一登と杏が顔を見合わせて「あの語尾をスルーするんだ」と驚いた顔をする。

夏樹の「やらかし」に比べたら、「まもんまもん」くらい大したことではないのかもしれない。

もしくは、母の懐の偉大さだろう。

「座ろうか、杏」

「……うん」

懐かしげに茶の間の中を見渡している杏に、一登が優しく声をかける。

数年ぶりに上がった由良家に、懐かしさを感じているのかもしれない。

もしくは、当時してしまったことを思い出しているのかもしれないが、一登は特に何も聞かずに、杏の肩を叩いて座った。

ファンタジーに巻き込まれて、異世界にまで行って大変な思いはたくさんしてきたが、杏が変われたこと、その時を見ることができたことを嬉しく思った。

何かと問題児扱いされる夏樹ではあるが、彼と一緒にいて不幸になったことなど一度もない。

親友であり、兄のような存在である幼馴染みが隣にいてくれたことを心から感謝した。

「えー、では僭越ながらこのルシファー・太一郎が乾杯の音頭を取らせていただきます。本日はお日柄もよく、良き出会いに恵まれ」

「そんなんはええんじゃ! 結婚式か!? いただきまーす! かんぱーい!」

「ちょ、小梅ちゃん!?」

「乾杯っす!」

「ふふふ、乾杯!」

「乾杯でまもんまもん!」

「乾杯!」

「うん、乾杯!」

「はんははんはんはんはんはんん! ちょ、俺のシャワータイム中に乾杯の声が聞こえた! まさか俺を省くのか! 急がないと……って、服がない! しまった! 着替えを用意するの忘れた! ――これも全部、死の神が悪いんだ! マモンさんとの戦いで力が上がったスーパーギャラクシー河童勇者タイムでぬっころしてやる!」

歌いながらシャワーを浴びていた夏樹は、着替えを用意することを忘れてしまったものの、動画配信の準備をして二階にいたリヴァイアサンことリヴァ子に連絡してパンツと体操服を持ってきてもらい、無事に夕食に参加できたのだった。