作品タイトル不明
80「男子会じゃね?」
「お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった。今日さ、一日がすごく長かった気がする。体感的に二ヶ月ちょいくらいあったよ?」
「……夏樹くん、またそんなよくわからないことを言って」
夕食を終えて一登、サタンと一緒に夏樹は自分の部屋にいた。
なんでも杏を含めて女子会をすると言い出し、男性陣は茶の間から追い出されてしまったのだ。
それはいい。いつものことだ。
どうしても女性が多いので、立場がないのは仕方がない。
いや、男性が多くても女性たちには勝てないだろう。
「……ありえねえだろ。ありえねえだろ!」
問題は、荒ぶるサタンだ。
魔王のごとく憤怒の表情を浮かべ拳をこれでもかと固く握りしめている。
魔力を発していないにも関わらず、夏樹よりも強いと、夏樹はもちろん、経験の浅い一登でも感じ取ってしまほどだ。
――もっとも。
「俺たちは仲間外れなのに、どうしてマモンだけが女子会に参加しているんだよ!」
怒りの理由はしょうもない嫉妬からだった。
「マモンと俺の何が違う!? つまみだって作るぞ? ガチな話し、二十年くらい前にフランスで修行したからね? 本気出したら、やばいよ? お菓子だって超本格的なもの作れるよ?」
「……もっと魔王らしいことしてよぉ」
「サタンさんらしいといえばらしいんだけど。おかしいな。俺の知る魔族ってみんな自由気ままに生きている気がするよ」
サタンをはじめ、サマエル、マモン、アマイモン、ガープ、リヴァイアサン、それぞれやりたい放題だ。
ルシフェルだけがまともだが、それゆえに苦労が多いと思われる。
「マモンさんも主夫業しているようだし。婚約者がいて、義理の息子もいる。女性陣からしたら良い話題になると思うんだよねぇ」
「……言い方悪いけど、話のつまみだよね。あはは」
「お、俺だって、今も何人かの女性からまた会いたいってアプローチがあるもん!」
そう言ってサタンがSNSを表示したスマホの画面を夏樹と一登に見せてきた。
「…………あー」
「…………わぁ」
言葉に悩み変な声が出た。
確かにSNSでは海外の女性から熱烈なメールが届いているのだろう。
手を振っている金髪美女が映っているので、そうなのだろう。
「甘いな、サタンさん。俺と一登が英語をちゃんと読めるわけがないだろう! ただの如何わしい詐欺にしか見えないからね!」
「……え?」
「さすがにラブとかそういうのはわかるけど、なんかすみません」
「……あれー? 日常の会話なんだけど、無理?」
「無理だよ! 学校で習っている英語となんか違うもん!」
「うん。ちょっと違うよね。単語はなんとなくわかっても、使い方がちょっと」
残念だが、中学生に日常会話レベルの英語を期待しないで欲しい。
授業と生の英語は違うのだ。
「……夏樹、お前、朝から他言語で絶叫するくせに英語が読めなかったのか」
「それとこれとは別だよ!」
「別かな!?」
ただ、最近のSNSは便利なので英語を訳してくれた。
その上で改めて読むと、サタンとまた会いたいという感じであることは間違いない。
「あのさ」
「うん?」
「サタンさんがお母さん推しなのはわかるんだけど、息子的に昔の女性と切れていない男はちょっとないわーって」
「いや、待て! 落ち着け! 違う! 昔の女じゃない! 彼女は野球観戦をした日に車のパンクを助けてあげて、せっかくだからと夕食を一緒にとってから交友ができただけで、夏樹や一登の考えるような関係じゃない! そりゃ、たしかに好意を抱かれて今もアプローチされているけど!」
「だーかーらー、そういう方をちゃんと縁切りしてからどうぞー」
「……だよな。わかった。きちんとしてくる。頼むから、なっちゃんポイントを下げないでくれ!」
「……ごめん、もう下げちゃった。なっちゃんポイント三億六千七百八十六万四千八百ポイント!」
「細かい!」
「今までは、二千六百七万六千三十ポイントだったのに……残念だよ」
「ポイントの基準がわからねえ! 待ってくれ、すぐにもう連絡は取れないと言うから!」
サタンは慌てて立ち上がると、スマホを操作して電話を始めた。
「夏樹くん、結構真面目に言っていたりする?」
「いや、冗談だよ。勇者ジョークって、感じだけど……なんていうか、相手側はアプローチしていても何もパッとしないっていうのは嫌かなって思っただけ。ダメならダメで次行けると思うけど、なあなあで仲良くされていても嫌じゃん?」
「そう、だね」
「――って、ゴッドも言ってた」
「言ってないよね!?」