作品タイトル不明
72「漆黒騎士さまたーんの正体じゃね?」①
漆黒騎士さまたーんの正体が、明かされようとしていた。
「――友よ、今日は手伝いに感謝するぜ。正体を明かしてやってくれ」
「――まもんまもん」
「おっと、その前に、河原に戻るとしよう。――閉じよ、尻子玉っ!」
ジェイソンが手を叩くと、一瞬にして夏樹たちが河川敷に戻る。
どういう理屈で移動できたのかまるでわからない。
川には階段も見当たらず、元に戻っている。
まるで夢でも見ていたようだ。
「すまない、水を差してしまった。さあ、今度こそ漆黒騎士さまたーんの正体を!」
「――まもんまもん!」
ジェイソンが促すと、漆黒騎士さまたーんが目出し帽をとった。
「――まもんまもん! 漆黒騎士さまたーんとは世を忍ぶ仮の姿でまもんまもん。このマモン! 七つの大罪の強欲を司る魔族にして、大魔族さまたんの腹心! 可愛い真門亜子さんの婚約者であり、素敵な息子小林蓮の父親でもあるでまもんまもん! そんな俺は、マーモーンでまもんまもん!」
「……なん、だと」
長い肩書きの果てに正体を明かしたのは、青森で懲役刑中の魔族マモンだった。
まさか、と驚愕する夏樹だった。
正直、本気で驚いている夏樹の姿を見て、一登は正気を疑った。
あれだけ「まもんまもん」言いながら、まったく別の第三者が出てきたらびっくりだ。
それはそれで面白いかもしれないが、今じゃない。
「すごい! ままもんまもんの伝道師マモンさんだ!」
「……マモンさん、今、伝道師になっているの!?」
マモンと関わりが薄い杏だったが、夏樹とは違った意味で驚いている。
「……まさか漆黒騎士さまたーんがマモンさんだったなんて。あの日、戦った時に比べてずっとずっと強くなっていたからわからなかったよぉ」
「このマモン自身が強くなったことを驚いているでまもんまもん。これもすべて――愛でまもんまもん」
「ふ、深い!」
深いかなぁ、と一登は思ったが言わなかった。
余計なことを言って話を長引かせたくない。
「――まもんまもん」
「――まもんまもん」
「どうしたの!? 急にふたりでまもんまもん言いながら夕日をバックに握手を始めて!? 友情!? 友情が目覚めたの!?」
あまりにもシュールな展開に、一登のツッコミが河川敷に響き渡る。
「なに叫んでるんだよ! ほら、一登もこいよ!」
「三原一登、さあ、共にまもんまもんといこうではまもんまもん!」
「なに!? なになに!? ちょ、手を引っ張らないで」
「あ、ずるい! 杏も!」
四人で手を繋ぎ円となる。
「なにこれ?」
一登の叫びが合図となって、四人はぐるぐる回り始める。
「やだ、こわい! こわいよ! このかごめかごめこわいっ!」
その場を回っているだけなのに、何かが召喚されてしまうのではないかと怯えながら、一登はぐるぐる回り続けるのだった。
「はっはっは、ナイスだ、ボーイ!」
そんな光景にジェイソンが満足そうに頷いていた。