作品タイトル不明
69「ギャラクシー流VSまもんまもん流じゃね?」②
夏樹は息を切らしていた。
「あー、しんどい」
拳にこだわったのは、一登と杏を巻き込まないためだ。
出力が上がっても、制御がいまいちだ。
その理由は、力を使えないから。
異世界であれば、地形が変わろうと、巻き込まれて人が死のうが知ったことではないが、地球ではそうはいかない。
つまり、夏樹は常に気を遣いながら戦っているのだ。
それでも、戦いに夢中になるとせっかくの気遣いを忘れてしまうことは多々あるのだが、無意識ながら超えてはいけない一線を考えているのだ。
(出せる範囲の全力でぶん殴ったけど、余裕ありそうだったんだよなぁ)
手応えは間違いなくあったが、漆黒騎士さまたーんからの魔力は今も変わりなく高まったままだ。
「……ままま、さすが由良夏樹でまもんまもん」
夏樹の拳を食らい壁に叩きつけられた漆黒騎士さまたーんの顔を覆っていた紙袋が破けていた。
漆黒騎士さまたーんは鬱陶しいとばかりに剥ぎ取った。
「――ついに素顔が! これで夏樹くんたちにも正体が……って、あれ?」
なぜか一登が驚いたような声を出している。
気持ちはわかる。
紙袋の下は、目出し帽だった。
おそらく正体を明かせない事情があるのだろう。
夏樹も向島市の紳士だ。
相手の秘密を不躾に暴くような真似はできない。
「まだまだやれるだろう?」
「もちろんでまもんまもん」
目出し帽から覗く漆黒騎士さまたーんの口元が夏樹と同じように釣り上がった。
「本当はなぁ、力を出しすぎるとこの場がどうなるかわからないから我慢していたんだけど――」
「まもっ!?」
夏樹の魔力がさらに上がった。
もう一段階、さらにもう一段階、と跳ね上がっていく。
視界の端で、一登と杏が息苦しそうに膝をついたのを見て、魔力を上げるのをやめた。
この辺りが限界だろう。
「凄まじいまもんまもんな魔力だ。それでいながら人間というまもんまもんな枠にまもんまもんしていることが信じられないでまもんまもん」
「よしてくれ。褒められ慣れてないんだよ」
「謙虚なまもんまもんだ。ならば、この漆黒騎士さまたーんも、全力を持って答えよう」
漆黒騎士さまたーんの魔力が消えた。
いや、彼は魔力を使うつもりがないのか、高めるのをやめたのだ。
今の漆黒騎士さまたーんは自然体だ。
ゆらりと力を抜き、棒立ちだった。
あまりにも無防備に見えるが、違う。
夏樹にはわかる。今の漆黒騎士さまたーんは自分では辿り着けないステージに立っていた。
ごくり、と夏樹が唾を飲んだ。
「――スーパーまもんまもんタイム」